ロシア・サハ共和国、世界一寒い村のお家事情~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.5

2018.01.21

世界で現地の家庭に滞在しながら、住まうように旅を続けている、モデル・定住旅行家のERIKOです。
前回、ロシアのシベリアにあるサハ共和国の首都ヤクーツクのお家をご紹介させて頂きました。今回も同じくサハ共和国からお届けします!
今回のお家は、ヤクーツクから東へ約1200kmのところにある、世界一寒い村オイミヤコン村です。

【定住旅行家 ERIKO の記事はこちらから】


真冬の平均気温は零下60度!

オイミヤコン村は人口200人が暮らす小さな村です。村人はほぼ全員がヤクート人で、アジア系の顔つきをしています。
この村が有名になったきっかけは、過去に最低気温零下71.2度を記録し、人間が暮らす場所としては最も寒い場所とされたことです。私が滞在したのは、ちょうど真冬の1月と2月。平均気温は零下60度でした。どれほど寒いのか想像もつきませんでした。

このオイミヤコンは盆地に位置し、風が全くと言っていいほど吹かないので、私たちが普段感じている、風に当たって寒いというより、じわじわと冷たさが染み込んでくるような感覚です。

なぜそんな場所に人が暮らしているのか不思議に思う方もいらっしゃると思います。一体彼らのお家や生活はどんなものなのでしょうか。


まっすぐな家は存在しない


滞在させてもらったのは、アンモッソバさん一家のお宅。5人暮らしでの家庭です。


家が4件くらいは建ちそうな広い敷地内には、一家建ての大きな家と、サマーハウス、トイレ、サウナ、牛小屋などがあります。オイミヤコン村の家は立派な木造住宅がほとんどです。また、水道管は寒さで凍ってしまうので、家に水道はなく、秋頃に川から取ってきた氷を納屋で保管し、それを溶かして利用したり、週に1回やってくる水の配給をするトラックから購入する人たちもいます。

水道がないため、トイレももちろん野外。トイレへ行く度に完全防備をしなければなりません。

前回紹介したヤクーツク同様、オイミヤコン村の大地も永久凍土です。そのため、夏に氷が溶け、また冬に凍るのを繰り返していると、どんどんお家が曲がっていきます。室内に平らな場所はなく、所々に凹凸が出来ていたり、斜めになっていたりします。家族はそれが当たり前だと思っているので、何も気にしていない様子でした。


気になる、外気零下60度のお家の中

それでは、お家を見てみましょう!


こちらがエントランス。冷気が入ってくるのを防ぐため、扉は二重になっています。
また、留守の時はこうやってホウキを斜めに立てかけて置くと、「今外出しています」というサインになるのそうです。


扉の上に飾ってあるのは、ヤクートのお守り。家を守ってくれています。中へ入る時はここで靴を脱いで、暖炉の側で干しておきます。
また、暖炉に火を入れる時は、火の神様に“サムサ”と呼ばれるヤクートのパンを食べさせる習慣があります。


親戚や知人、近所の人など、突然家を訪ねてきた人には必ず紅茶を振る舞います。


ここは日中の家族の憩いの場であり、寝室でもあります。広々とした空間で、家族はよくテレビを観ていました。


こちらは普段は子ども部屋として使っている部屋です。今回、私はここで寝泊まりをさせてもらいました。


こんな寒さの中で動物が生きていられるのも不思議ですが、毛のフサフサした牛を飼育しており、毎朝ここで搾乳をして、料理に使ったり、それを保存するために凍らせておいたりもします。
ちなみに、オイミヤコン村の人たちのほとんどは、ライカ犬やハスキー犬を飼っていて、冬でも外で放し飼いにしています。


オイミヤコン村の人たちは、みんな必ず洗濯物は外に干します。
私も外干しにチャレンジしましたが、1分ほどですぐ凍ってしまい、お洋服も心配になる程カチコチになってしまいました。
初めはなぜ洗濯物を外に干すのかと疑問に思っていたのですが、家族の話では、「太陽の光に当てると、乾いたときにお日様の匂いがするから、外に干すの一番!」とのこと。
丸1日外で干した後は、家の中に取り入れて、完全に乾かします。

外にあるトイレは、昔日本では当たり前だった、懐かしい汲み取り式(ボットン)便所。
零下60度で用を足していると、一番冷たくなるのはお尻ではなく、指先。やはり人間の体は末端から冷えていくのですね。
ちなみに、匂いは無臭で、菌も生息できない環境なので、衛生面は問題ありません。


オイミヤコン村の人たちの近所づきあい

これだけ気温が下がると、15分以上屋外で過ごすことは危険です。外へ出ると、まつげや鼻毛がすぐ凍りついて、息をフゥーっと吐くと、かすかに「パラパラ」と言う音が聞こえて凍ってしまうほどです。

この冬の時期は、近所の人たちと立ち話をしたり、情報交換をすることができません。
それでは、どうしているのかと言うと、WhatsAppという日本でいうLINEのようなアプリでグループを作り、そこでコミュニケーションをとっているのです。
オイミヤコン村にはWi-Fiが飛んでおり、ほとんどの人がスマートフォンでインターネットを使用しています。ですので、インターネット上で学校や村の連絡事項などを伝えたり、困ったことなどを相談したりしていました。


食料はどうやって得るの?


冬はこんなに寒いオイミヤコン村ですが、なんと夏には、同じ村とは思えなほど様変わりをします。まず気温は摂氏40度を越え、大地には草で一面に緑が生い茂り、野菜や果物もよく育ちます。

6月にヤクートの正月を迎えた後から夏にかけては、オイミヤコンの人たちが1年で一番忙しい時期に入ります。たくさんの作物を栽培し、収穫するのに大忙し!
冬に食卓に並ぶ食材のほとんどは、夏に取れたものを収穫し、保存したものだったのです。家の中には、その食料を保存するための床下収納庫がありました。
オイミヤコンのお家は、まさにその自然環境に合わせて作られたものなのです。


オイミヤコン村へ行った初めの頃は、この村の人たちは、他へ行く場所がなくて、仕方なくここで暮らしているのかと思っていました。
しかし、一緒に生活を共にする中で、彼らはむしろオイミヤコンを、世界で一番環境のいい、美しい空気と自然のなる聖なる場所だと思って暮らしているだと知りました。確かに、オイミヤコンの自然は息を飲むほど美しい銀世界で、食べ物もとても新鮮でした。

その土地には、暮らしてみないとわからない魅力がたくさんあるものですね。


ERIKO

モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
WEB : http://chikyunokurashi.com
インスタグラム:erikok1116