ナウシカの故郷 ジョージア・スヴァネティ地方の家~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家

2019.03.13

世界中で現地の家庭に滞在し、その国の文化や暮らしを体験して発信している、モデル・定住旅行家のERIKOがお届けする、”定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家” シリーズ。

15回目の今回はナウシカの故郷、ジョージア・スヴァネティ地方からお届けします。

「スヴァネティは別の国だ」とジョージア人が豪語するほど、ジョージア国内でも独自の文化や歴史を持った、コーカサツ山脈に囲まれたスヴァネティ地方。
ジョージアの北西、ロシアとの国境近くに位置しています。

ヨーロッパでも最も標高が高い場所にあるユネスコ遺産のウシュグリ村があり、その景観の美しさから、「ヨーロッパ最後の秘境」と呼ばれています。


宮崎駿監督のアニメ「風の谷のナウシカ」の舞台になった場所と言われており、主人公のナウシカが身につけている服は、スヴァネティの民族衣裳がモデルになっていると思われているほど類似しています。
それでは、ヨーロッパ最後の秘境と呼ばれる、スヴァネティ地方のお家をご紹介していきましょう。


独自の文化が継承される歴史的土地


ジョージア最高峰のシュハラ山(標高5201m)がそびえ立つ、コーカサツの山々に囲まれたスヴァネティ地方。この土地には、ジョージア国内にあるどの文化とも類似しない、独自の「スヴァン」と呼ばれる文化が人びとによって継承されています。

スヴァネティ地方の景色を一言で表すと、まさに “絶景”! 自然の美しさの中に、この土地の人びとが経験してきた歴史のかけらが融合され、味わい深さを醸し出しています。

この土地に暮らすスヴァン人たちは、19世紀半ばにロシア人が統治するまで征服されることなく生活していた人びとです。彼らは紀元前1世紀ごろまでにはすでに勇敢な戦士として知れ渡っており、古代ローマ時代の地理学者ストラボンの文献にも登場しています。

キリスト教が伝来したのは紀元6世紀ですが、その頃にはすでにスヴァン文化が深く根づいており、独自の言語、音楽、騎士道や一族同士の対立を裁く慣習法を持っていたとされています。


スヴァネティ地方のトレードマーク “コシュキ”

スヴァネティ地方全体で見られる、この地域を代表する特徴的な建物が ”コシュキ” と呼ばれる塔です。9世紀から13世紀の間に、争いの避難所、貴重品を守る場所として建てられました。


スヴァネティ全体で200基あると言われており、現在は家畜の干し草や雑穀の倉庫として使われています。この塔はまさに、スヴァネティ地方のトレードマークとも言える存在です。

私が滞在したスヴァネティ地方のナタリー村のお家には、敷地内にこのコシュキ塔がありました。

中に入らせてもらいましたが、とても狭くて細長く、真っ暗で、息苦しく、お世辞にも快適とはいえない空間でした。昔は戦いの最中、この塔の中で家族が避難生活を送っていたことを想像すると、とてつもない忍耐力が必要だったのではないかと思います。


スヴァネティ地方でしか見られない家の特徴は他にもあります。それは、新しく建てる家と古い家を併設して建設することです。
通常私たちが家を新しく建て替える時には、古い家を取り壊して建設するのが一般的です。


しかし、この地方では古い家は決して取り壊さず、新築は古い家とくっつけるようして建て、納屋や家畜小屋として利用するのです。
中には昔使用していた家具や農具をそのまま保存している家庭も多く、昔の貴重なスヴァン人の生活を知ることができる博物館のようになっています。


自給自足の生活を営むジョージアの暮らし

家のリビングは人を招くことが多いジョージアらしく、広々としています。
冬の寒い時期以外は、玄関や窓はいつも解放され、外で仕事をしている人たちが家の中へアクセスしやすい作りになっています。


スヴァネティ地方の人たちの一般的な暮らしは、自給自足の生活です。広い家の敷地内に畑を持ち、生活に必要な野菜や果物を育てます。
また、多くの家庭では牛や豚などの家畜を飼育しており、家族が食料をお店で購入することは滅多にありません。

家族が毎朝起きてまずすることは、牛の乳搾りと放牧です。ジョージア料理にたくさん使われる乳製品は、生活の基盤となり、様々な料理に重宝されています。


ジョージアの料理の主食、「ハチャプリ」はチーズを挟めたパンで、毎日食べるものです。またジョージアは言わずと知れた長寿大国。特にスヴァネティ地方には長寿村が点在していることでも有名な土地です。

その長寿を支えていると言われるのが、水、ヨーグルト、ワインといわれています。
ジョージア国内には、水の源泉が700カ所以上あり、ワインは世界で一番古いワイン造りの歴史を持ち、世界無形文化遺産に登録されています。”マッツォーニ” と呼ばれるヨーグルトは、ジョージア人が毎日欠かさず食べる食材で、スープやソース、時には母乳変わりにも使われる、まさにジョージア人のソウルフード。

私も滞在中、一日500mlほど食べていましたが、腸の調子が良くなり、お肌もツルツルになりました。また、主食のハチャプリに使われるパン生地の中にもヨーグルトが練りこまれています。


スヴァネティの人たちが暮らす住まいは、まさにこうした彼らの自給自足のライフスタイルに適した作りになっており、家畜との共存、畑仕事がしやすい構造になっています。

生活する住まいが、ライフスタイルから必然的にその形を形成したかのようです。近代的な住まいではありませんが、スヴァンの伝統文化や暮らしを継承しながら、ある種の豊かさを持った暮らしであると感じました。

ERIKO 
モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
WEB : http://chikyunokurashi.com
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