世界の自然環境に適した家の工夫

2016.05.16


世界にはさまざまな気候や生活習慣の国が存在します。各国の人々は、住まいにどんな工夫をこらして自然と向き合っているのでしょうか。世界の家の、快適に暮らすための工夫をご紹介します。


暑さ対策 スペインの家の壁はなぜ真っ白なのか


スペインの夏は最高気温が40℃を超す日も珍しくなく、日差しも強烈です。しかし湿度は低くカラっとしているので、高温多湿な日本と違って日陰はそれなりに快適なのです。
スペインの海岸沿いの家々は外壁が真っ白に塗られています。これは強烈な日差しをはじき返すため。
また、窓は太陽の熱を極力家の中に入れないように小さく作られています。外を吹く風は熱風なので、日本の夏のように窓を開け放ち風通しを良くして涼むという発想はありません。ステンレス製の雨戸がついていて、サッシの窓が二重になっている家も多いそうです。

しかし、白い壁は暑さ対策のためだけに塗られたわけではありません。もともとは伝染病が流行したことから、安価で手に入りやすい白い壁の原料でもある石灰を消毒薬の代わりに塗ることにしたのだとか。今では暑さ対策のために法律で決まっているそうですが、実用的な理由から始めたことが、いつの間にか観光地としても有名になったというのは面白いですよね。

人々は、夏の昼間は日が暮れるまでできるだけ家の中で過ごします。そして夕方に過ごしやすい気温になるのを待ち、夕方から夜にかけて野外での活動を始めます。これは、スペインにあるシエスタという習慣です。これも猛暑の気候と上手に付き合うスペインの人たちの知恵の一つですね。


過去最高気温は51℃!インドの暑さ対策


過去最高気温51℃を記録しているインドでは、家の中でも暑さ対策が徹底されています。
最近多くなっているというマンションなどの高層ビルは、日本とは違い上層階に行くほど家賃は安くなります。なんでも、暑すぎて最上階では熱射病になってしまうからなのだそう。日差し・室温ともに遮断できる下の階が一番良いというわけです。

さて、そんなインドの家ですが、遮熱性の高いレンガで作られていることが多いようです。また、壁の色は白。これは、スペインの家と同じ構造です。白い壁にすることで、ある程度の日差しを跳ね返せるという理由があってのことだそう。
さらに特徴的なのは、部屋の内装です。日本では“高級”というイメージが付きがちな大理石が床に敷き詰められているという住宅も少なくないようです。これは、大理石はひんやりとしていて熱を持たないため、暑さ対策にはもってこいの床材だから。しかし、ちょっとしたデメリットもあります。それは、冬場に冷えすぎてしまうということ。どんな素材にも一長一短があるのですね。

インドで嫌われる住宅の条件は「日当たりのよい部屋」「南向き」というもの。日本とは真逆の価値観なので驚くかもしれませんが、約10か月も暑い時期が続くことを考えると納得せざるを得ません。遮光カーテンなど、日光を遮るものも欠かすことはできません。いかにしてツラい暑さを乗り切るか、ということが重要視されています。


ツラい暑さをやり過ごす!カンボジアの高床式住居


カンボジアは熱帯モンスーン気候に属しているため、年間の気候を乾季と雨季に分けることができます。気温はというと、1年を通してあまり大きな変化はないのだそう。
雨季の時期は少し肌寒いようですが、乾季になると最高気温は40℃になることも!しかし、湿度が低いためか日本よりも過ごしやすい気候だといえるようです。

そんなカンボジアで今でも人々に親しまれている伝統的な住居があります。それは、高床住居。社会の時間などで、よく耳にした単語ではないでしょうか。
カンボジアの高床式住居には伝統的なものから、現代的なものまで幅広い時代のものがあるようです。現代的なものには、支柱に鉄のワイヤーや鉄筋が使われているというのだから驚きです。しかし、それほどまでに技術が発達しているのに、なぜ高床式倉庫に住むのでしょうか。

まず、大きな理由としてあげられるのは暑いからだそうです。地上から数メートル高いだけでも、風通しが良くなり涼しく感じるのだとか。また、床下も日よけされるために丁度いい避暑スペースになってくれるそうです。エアコンや扇風機を使用しないからこそ残った工夫といえそうです。
また、カンボジアでは多くの人が農業に従事しているため、床下では家畜を飼うことが普通なのだそう。
雨季の時期には、洪水が発生することもあります。地面に直接家を建てるよりも、高床式住居にしたほうが、リスクが小さくて済むということですね。

しかし、気になるのは、不安定になったり崩壊したりしないの?というところ……。カンボジアは地震がほとんどない地域らしく、地震によって家が倒壊するなどといった心配はないのだとか。だからこそ、受け継がれた住居ともいえそうです。


歴史と自然が感じられる 台湾の伝統的スタイル


台湾には「三合院」と呼ばれる伝統的な建築スタイルがあります。三合院はコの字型をした住居となっていてとても広いです。マンションなどの集合住宅が主流となってきている台湾では、なかなか新築として建てる人はいないようですが……。
台湾はもともと土地が狭いので、一戸建てを建てる人はとても裕福ということになるそう。そのため、三合院が建てられるのは比較的土地が確保しやすい農村部となるようです。
ちなみに、現在の台湾で主流の一戸建てはサイコロ型のものです。土地が少ないため、隣の家同士がとても密着していて、3階建てが普通。屋上には必ず祭壇が設けられます。

三合院の周囲には高さ約1メートルの壁があり、さらに家の周りには竹などの植物が植えられています。これらは、台風が来たときに雨風の影響から家を少しでも守れるようにという意図があってのこと。台湾では台風が多いため、このような工夫がされているのです。また、長く暑い夏の時期には日陰づくりにも役に立ってくれますよ。沖縄にある住居と少し似ていますよね。

しかし、現在では三合院のような伝統的な住居は、ほとんど住居として使用されることはなくなっているようです。基本的にレンガで建てられるために、経年劣化に逆らえず、廃屋となってしまうケースも多いのだとか。その一方で、レトロな喫茶店やアートスペースとして利用している場合もあるようです。
どのような形でも、伝統的な住居は文化の一つとして後世に伝わってほしいと考えてしまいます。


自然の力を有効利用 ノルウェーの草屋根


自然と上手く融合した家のスタイルとして、ノルウェーの草屋根があります。屋根の上に白樺などの木の皮を張り、その上に土を乗せ芝などの草を植えて作られるもので、森林の多いノルウェーの自然豊かな風景とよく溶けあっています。

草屋根の優れているところはその景観だけではなく、放熱性にあります。屋根に植えられた植物の体内に豊富に含まれる水分が、太陽が照りつけることによって蒸発し、その気化熱によって太陽の熱を中に伝えることなく室内を涼しく保ってくれるのです。屋根からの照り返しの熱も減少するので、わずかではありますがヒートアイランド現象の緩和にも貢献しています。また保温性、耐久性にも優れており、冬には暖かい家を作ってくれます。まさに、自然と共存する家といえますね。

最近では日本でもビルの屋上に緑豊かな庭をつくる屋上緑化に取り組む建物が増えましたが、ノルウェーでは古くからその考えが取り入れられているのです。


寒さ対策 スウェーデンの家は断熱性抜群の高機能住宅


スウェーデンの冬は日本とは比較にならないほど寒いです。冬は氷点下の日々が続き、夜中はマイナス30度以下になることも珍しくありません。そんなスウェーデンで、人々はどのように過ごしているのでしょうか。外出時はしっかり着こんで防寒に余念がないものの、家の中はシャツ1枚で過ごせるほど暖かいのです。日本のようにガンガンに暖房をきかせているわけではありません。どうしてなのでしょうか。

スウェーデンの家の壁の中には、断熱材がぎっしりと詰めこまれ、壁の厚さは30cm以上にもなります。ガラス窓も二重窓は当たり前、三重窓も普通に採用されています。サッシも冷気を伝えにくい木製または樹脂製が主流です。
このように断熱対策が徹底されているため屋外の冷気をシャットアウトして、部屋の中の温度も外に逃がさないので暖かく過ごせるのです。


涼しくないわけがない! ブルネイの水上住宅

引用元:khong katesorn / Shutterstock.com

700年以上の歴史を誇るブルネイの水上集落。約4万人の人が水上で生活をしているというのだから驚きです。
一見、不便そうにも見えるのですが、こちらの住居には好んで住んでいる人が多いのだとか。水道・電気はもちろん、最近ではインターネットも通っていることから、生活で困ることはないそうです。食料品店等の店に加えて、学校や病院などの公共施設もあることから、とても豊かな生活が送れるということも分かります。

もちろん、これほどまでに便利になったことには理由があります。それは、水上での生活が陸地に比べて涼しくて快適だから。多くの人が、陸地の高級住宅を与えられても水上の家に戻ったのだとか。よほど居心地がいいのでしょうね。


世界各国の伝統的な家の工夫を取り上げてみましたが、こうしてみると日本の家にも活用できそうな部分がありますね。たとえばノルウェーの断熱への取り組みを日本の家づくりにも活かせば、空調の使用頻度を大幅に減らして、節電に貢献できそうです。
もちろん日本独自の気候があるので各国の工夫をそのまま取り入れるわけにはいきませんが、現状改善のヒントになるかもしれません。