氷点下65度を記録!ロシア・サハ共和国、永久凍土に家を建てる方法~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.4

世界中で現地の家庭で生活を体験しながら旅をしている、“定住旅行家”のERIKOです。
これまで、世界各地、74家族の家に滞在をしてきました。お家は季節によっても、その用途や機能が変わって来ます。
日本もそろそろ寒さが本格化してきましたが、世界には我々が暮らす日本よりももっと寒い国はたくさん存在しています。
今回は、世界一寒い国、ロシアの中にあるシベリア、サハ共和国のお家を紹介したいと思います。

冬は零下50℃前後となるサハ共和国の首都、ヤクーツク。一体どんなお家なのでしょうか。

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サハ共和国とは?

まずは、日本と近い距離にありながら、あまり知られていない、サハ共和国についてご紹介したいと思います。
サハ共和国はロシア連邦国の中にある22の国のひとつです。面積は日本の約9倍でインドとほぼ同じ面積、人口は香川県と同じ約100万人が暮らしています。
資源大国でもあり、鉱物、石炭、天然ガスなどが豊富にあり、ダイヤモンドの産地としても知られています。

サハ共和国で、日本人の私がとても安心感を覚える理由の一つに、サハに暮らすヤクート人の存在があります。
彼らの顔は日本人に近い、モンゴロイド系の顔つきをしていて、さらに自然信仰という文化も持っています。太陽や自然を神として崇めている部分で、日本人の精神にとても近いものが感じられます。

サハ共和国の首都は、ヤクーツクという都市。日本との時差は0時間です。また、極東最古の都市で、380年以上の歴史があります。


ヤクーツクのマンションに住むエレーナさんのお宅

(右 エレーナさん 左 エレーナさんのお母さん)

そんなヤクーツクに暮らすエレーナさんのお家をご紹介したいと思います。エレーナさんが暮らすのは、高層マンション。

彼女はその9階の2LDKの家で一人暮らしをしています。エレーナさんは、食品会社の経理で働いていて、2人のお子さんがいますが、それぞれ自立して、サンクトペテルブルクに住んでいます。

ちなみに、ロシアでは親が子どもにマンションを買ってあげるという習慣があり、大人なると親から家やマンション、もしくは車を買ってもらいます。
中国にもこういった習慣があると聞いたことがありますが、この時ほどロシア人に生まれて来たかったと思ったことはありません。


氷の大地に建物を建てる方法


ヤクーツクの冬の平均気温は零下40℃、寒い日は零下50℃にもなります。ヤクートの大地は、地表から200メートルほど下まで、永久凍土と呼ばれる氷の層になっています。そんな氷の大地に建物を建てるのは、そう簡単ではありません。

夏は気温が摂氏40℃にも上がるので、その凍土が1.5メートルから2メートル溶けてしまいます。凍土が溶けたり凍ったりを繰り返すと、建物は長く持ちませんし、地面に基礎を作ることはできません。
ですので、ヤクートの大地に建つ建物は、鉄筋コンクリートの長い杭を打ち込んで、その上に土台の基礎を作り、建物を建設して行くのです。
ちなみに、この杭を固定する接着剤には塩水が用いられています。


お家の中を拝見!

さて、こんな極寒の街ですが、建物や家の中は驚くほど暖かいのです。マンション全体はセントラルヒーティングで温められています。
セントラルヒーティングとは、北海道でよく見られる、お湯のパイプが部屋の中に敷かれているタイプのこと。

ですので、家にいるときは基本的に夏服!時には暑すぎてを開けて冷たい空気を入れるなんてこともありました。
建物と外では寒暖差が激しい時で、60℃以上あるので、出かける前はしっかりとコートを羽織って、帽子も被るのが大切です。

入ってすぐのエントランスには、毛皮のコートや靴が並べてあります。ロシアは日本と同じで、玄関で靴を脱いでから家の中に入る習慣があり、家に入る時は靴を脱ぎます。


キッチンは家の比率からするとごく小さめ。備え付けのコンロがなく、外付けの電気コンロを使用して料理していました。
また、寒い地域ほど冷蔵庫は必需品です。外から持ってきたものはカチコチになっているので、それを解凍し、いい温度に保つために冷蔵庫を使用するのです。

こちらが私が泊まらせてもらった部屋。

広々とした空間で、窓からの景色も銀世界が広がっています。
窓が多いと寒さが染み込んで来るので、窓際にはそれ専用のヒーターが備え付けてありました。家の中は十分暖かいので、毛布も入らず、シーツ1枚とTシャツで寝ていました。
また、立派なベッドは実は空気を入れるタイプのエアーベッド。弾力があって、まるでトランポリンの上で寝ているみたいでした。


こちらは家のインテリアとしても飾ってある、“カメリョック”と言われる陶器。ヤクート人の家に行くと、必ずと言っていいほどあります。
カメリョックは、もともと“暖炉”を指す言葉で、この陶器はそれを小さくしたもの。
ヤクート人は自然信仰の文化を持っていて、ここにろうそくを付けたり、馬の毛を置いたり、パンを置いて、火の神様を通じて先祖と交信し、守ってもらうという意味があるそうです。

「悲しい時などマイナスの感情や気を取り払う時や、魂を浄化するときに使ってね」と私もエレーナさんからプレゼントされました。

この寒い土地で暮らすサハの人々にとって、家は生活をする場でもあり、自分の体を守るものでもあります。

「生まれたときからこの環境に住んでいるので、零下40℃は寒いとは思いません。物は腐りにくいし、家の中はとても快適なので、特に不便さを感じることもないです。
最近は温暖化で、温度が極端に低くならなくなったので、冬に風邪を引く人が出るようになりました。気温がグンと下がった方が、ウイルスも蔓延しなくていいこともあるんですよ」
とエレーナさん。
住めば都とはこのことなのではないでしょうか。


ERIKO

モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
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この記事を書いた人

定住旅行家 ERIKO

モデル・定住旅行家
モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。