室内環境改善のプロに聞く! 心地よい注文住宅のつくりかた 第5回 〜50年前とは何が違う? 今、家づくりで気をつけたいこと〜

2017.08.06

四国・愛媛から全世界に家づくり情報をお届け! ieny地域ライター高坂類です。

“医・食・住”から見る室内環境改善アドバイザー・仙波正志さんに、室内空気の改善方法や冷暖房節約など家づくりの参考になる基礎知識を解説いただく連載「室内環境改善のプロに聞く! 心地よい注文住宅のつくりかた」。

本日第5回は、50年前の住宅と現代の住宅を比較しつつ、現代の家づくりで気をつけたいことを教えていただきます!



<仙波正志さんプロフィール>
“医・食・住”に関連する商品開発と販売業務のほか多岐にわたる事業を行う、株式会社養命(本社:愛媛県新居浜市)の代表取締役社長。室内環境改善アドバイザー。
●株式会社養命
〒792-0836 愛媛県新居浜市篠場町6-25
TEL:0897-47-1400 FAX:0897-43-9738(9:00~19:00)
休日:日曜
公式Webサイト http://youmei.p-kit.com/



50年前と現代、家づくりはどう変わった?

高坂「仙波先生、今日もよろしくお願いします! 今回は、50年前と現代の家づくりの違いを教えていただきます。」

仙波「よろしくお願いします。さあ、何から話そう!」


 床下は土、基礎も土・石・木


仙波「台からいこうか。」

高坂「下ですか?」

仙波「そうです。家の床下は、50年前なら土でした。今は、コンクリートですね。基礎はどう違うと思う?」

高坂「基礎も、現代はコンクリートですよね?」

仙波「そう。ベタ基礎といって、鉄筋の入ったコンクリートを土の上に作っています。では昔はどうだったか?」

高坂「土の上に......。なんでしょう......?」

仙波「土の上に平たい石を並べて、その上にの柱を立てていました。その上にのせる土台も木だったから、“ほぞ”という凹凸を接合する木どうしに作って、はめ込んで留めていたんですよ。
今は、コンクリート基礎ならボルトで留めるだけだね。」


壁はどう変わった?

仙波「壁は、50年前なら荒壁(あらかべ)ですね。」

高坂「あらかべ? あの、触るとボロボロ崩れてくるものですよね?」

仙波「そうそう(笑)。竹を編んだ土台に、藁を入れた土を塗った壁。仕上げは、漆喰を塗ることもあったかな。厚さは3センチくらい。」

高坂「土台は竹を編んだものだったんですか?」

仙波「そう、だから断熱効果があったんだよ。」

高坂「なるほど! では現代では、壁は......」

仙波「現代では、紙のプラスターボードか、石膏ボードだよね。石灰入りで、ただ貼るだけで本当に簡単。だいたい、下に断熱材を仕込んでいますね。気泡の入ったウレタンとか、いろいろ断熱材を開発しているね。仕上げは、クロスや珪藻土(けいそうど)。厚みは2ミリくらい。薄いねえ。」

高坂「珪藻土ってなんですか?」

仙波「ざっくり言うと、植物プランクトンの化石を使った、高級感を増すための塗り壁材です。吸湿、消臭、断熱効果もあると言われています。それにしても、厚みの違いがすごいよね。数センチから数ミリへ。
昔の土の壁は、夏は土が水分を吸ってくれ、は水分を放出してくれて、自然な調湿効果があったんですよ。」

高坂「自然素材でできているからこその知恵があったんですね。」


軒下、窓、施工人数、換気扇......

仙波「それから軒下が無くなったよね、現代では。
はどうでしょう。まず窓枠は言うまでもなく50年前は木だよね。今はアルミサッシ。窓ガラスも昔は1枚ガラス、今はほとんどが“ペアガラス”と呼ばれる2重のガラスですね。それから施工する人員数ですが、50年前だと当然ながら大工さんが人力で建てていたから、必ず2名以上はいたよね。」

高坂「今は......」

仙波「1〜2名でしょうね。現代の家づくりは、ほとんど“組み立て”だから、1名でも進行は十分可能です。大工さんの手刻み、手作りに比べると、手間は30分の1くらいでしょうね。
それから、換気扇。50年前は、当たり前ですがありません。現代では建材も何もかも石油製品が多くなって、揮発性物質を含む素材をたくさん使用するようになりました。だから換気扇をつけることが義務付けられているんですよ。」



屋根、床の下地、床の仕上げ、外壁は?

仙波「屋根はどうだったと思う?」

高坂「50年前の屋根......やっぱり木ですか?」

仙波「そうです。“野地板(ノジイタ)”と呼ばれるバラ板で作った木の屋根。隙間があるから通気性に優れていて、逆に劣化しにくかったんですよ。
今は木の粉をボンドで圧着したコンパネ材が主流ですね。コンパネはベニヤ板の厚いもの。こちらは、熱などに影響を受けて20年くらいで劣化してきます。」

高坂「自然素材って強いんですね。」

仙波「次、床。床の下地もバラ板でした。もちろん無垢。厚さは1.5センチくらいかな。これも木で、隙間があるから通気性がありました。
では現代の床の下地は? こちらもコンパネです。厚みは1.3センチくらい。隙間なし、通気性なし、でも下からの冷えは遮ってくれる。」

高坂「なるほど......。床の仕上げはどうだったんでしょうか?」

仙波「50年前は、そのままだよね(笑)。現代はコンパネがプリント仕上げされているものが多いですね。」

高坂「ふむふむ。昔はただのそのままの木だったのに、今では木でできた素材に木目をプリントするような、不思議なことが起こっているわけですね......。」

仙波「外壁も昔は何もしていなかったけど、現代ではこういう“サイディング”が主流ですね。」


高坂「サイディング?」

仙波「セメントに色をつけた壁の材料です。セメントの塊だよ(笑)。こんな風に形取ってプレスして彩色したものです。
全体を通して、“手作り”の家から“組み立て”の家になった感じだね。
建材もほとんどが“プレカット”と呼ばれる機械加工で全て図面通りにカットされて、大工さんがしていた仕事の大部分は無くなってしまいましたね。でも、人間の手でしかできない施工はもちろんたくさんあります。」


現代の家づくりで気をつけたいことは?


仙波「50年前の家は、ほとんどが自然素材でできていて、隙間だらけでした。つまり通気性は抜群だったんです。
対して現代は、省エネのために、高気密高断熱の住宅を作らなければならなくなりました。そのために換気扇も必須でつけることになりましたが、換気扇を常に回しているお宅って、あまりないよね(苦笑)。みんな換気扇の音を気にするから、ずっとつけっぱなしにはしていないですよね。
すると、空気の流れがなくなる。揮発性物質が家の中に溜まったままになる。」

高坂「息が詰まりそうです......。」

仙波「では、どうしたらいいか? わざと隙間を作ればいいんですよ。つまり、空気が入るところと出るところを作る。意外と気がつかない方が多いんですが、1か所の隙間だけでは空気は流れないんです。浴室などは大抵1つしか窓がないですけど、換気扇を回さなければ窓だけ開けても空気は動きません。空気の流れを作るには、2か所の隙間が必要なんです。」

高坂「心地よい家づくりのために室内の空気を動かすことの重要性については、これまでも教えていただきましたね! 第1回のシーリングファン第2回の天窓も、空気の流れを作って心地よい空間を作るために役立つことでした。」

仙波「高断熱・高気密の家が悪いわけではないのです。ただ、昔の家とは違うということをよく認識して、“わざと”隙間を作ること、空気が入ったり出たりする場所を意識して作ることを忘れてはいけないということです。シーリングファン天窓ももちろん活用してくださいね!」


ありがとうございました!!


高坂「それにしても昔の家は、全てが自然素材だったんですね。考えてみれば当たり前のことなのですが、現代においては、今やそれが逆に豊かに感じられますね。私の実家は大工さんが建てた昔ながらの木造の家なのですが、本当に隙間だらけで......でも、それが良かったのだと気がつけました。」

仙波「生物にとって、密閉された空間ほどよくないものはありません。冷暖房効率も大切にしながら、心地よく過ごせるように通気性のいい家づくりを意識してみてくださいね。」

高坂「今日も、より良い家づくりの参考になりました。ありがとうございました!!」


「室内環境改善のプロに聞く! 心地よい注文住宅のつくりかた」は、“医・食・住”から見る室内環境改善アドバイザー、株式会社養命(愛媛県新居浜市) の代表取締役社長・仙波正志さんに、心地よい家づくりの参考となる基礎知識を改めて詳しく解説いただく連載記事です。

次回もお楽しみに!


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