室内環境改善のプロに聞く! 心地よい注文住宅のつくりかた 第4回 〜遮熱・断熱塗料の基礎知識と活用〜

2017.07.22 高坂類

四国・愛媛から全世界に家づくり情報をお届け! ieny地域ライター高坂類です。

“医・食・住”から見る室内環境改善アドバイザー・仙波正志さんに、室内空気の改善方法や冷暖房節約など家づくりの参考になる基礎知識を解説いただく連載「室内環境改善のプロに聞く! 心地よい注文住宅のつくりかた」。

本日第4回は、心地よい家づくりにぜひ知っておきたい、遮熱・断熱塗料の基礎知識と活用について教えていただきます!



<仙波正志さんプロフィール>
“医・食・住”に関連する商品開発と販売業務のほか多岐にわたる事業を行う、株式会社養命(本社:愛媛県新居浜市)の代表取締役社長。室内環境改善アドバイザー。
●株式会社養命
〒792-0836 愛媛県新居浜市篠場町6-25
TEL:0897-47-1400 FAX:0897-43-9738 (9:00~19:00)
休日:日曜
公式Webサイト http://youmei.p-kit.com/


「遮熱塗料」って何ですか?



高坂「仙波先生、今日もよろしくお願いします! 今回は、遮熱・断熱塗料の基礎知識と活用についてがテーマだそうですが、そもそも遮熱塗料とは...?」

仙波「遮熱塗料とは、熱を伝えにくくすることで冷暖房費を節約できるという塗料です。ほとんどの製品にセラミックが含まれています。」

高坂「セラミック?」

仙波「セラミックは簡単にいうと、土を焼いたもののことを指します。やきものもセラミック。土を焼いて、細かいサラサラの粒状になったものが塗料に使われています。この瓶に入っている白い粉がセラミック。」

高坂「砂みたいですね! なぜ、セラミックを塗料に入れるのですか??」

仙波「セラミックに、熱を反射する性質があるからです。セラミックの形状は小さくて丸い粒なんですが、中に空気を含んでいると熱を伝えにくくしてくれるのです。
セラミックの仲間でも、例えば陶器は、中に含まれる酸素量が多い。つまり空気が多く含まれているので、熱さや冷たさが伝わりにくい。対して磁器は比較的酸素量が少ない。つまり空気があまり含まれないので、陶器よりは熱が伝わりやすい性質があります。
遮熱塗料に使うセラミックの粒の大きさや形はいろいろ。いずれも熱が伝わりにくいように工夫されています。」

高坂「なるほど...!」


「遮熱塗料」と「断熱塗料」がある!



仙波「今、“遮熱”塗料について説明しましたが、正確には、“遮熱”塗料と“断熱”塗料があります。」

高坂「遮熱塗料と断熱塗料? どう違うのですか?」

仙波「遮熱塗料は、家の外側、外壁や屋根などに塗るものです。
断熱塗料は、“断熱塗料”という名称で謳っているのが1社だけで1種のみなのですが、家の外にも、中の壁や天井にも塗れるものです。効果は、断熱塗料がてきめんです。」

高坂「外にも中にも塗れることで効果が高まりそうですね。断熱塗料について教えてください!」


断熱塗料「GAINA(ガイナ)」って?


仙波「“断熱”塗料として知られる『ガイナ』は、宇宙技術を民間に転用したもので、とても優れています。」

高坂「宇宙技術 ?!」

仙波「ロケット打ち上げ時の熱から機体と人工衛星を守るために、ロケットの先端部に塗布するための断熱技術をJAXAが開発したんです。その技術を転用して断熱塗料を作ったんですよ。」

高坂「今の話だけで、ものすごく断熱効果がありそうです(笑)」

仙波「さっき話したセラミックの粒の形が、一般的な遮熱塗料に含まれるものは丸いボール状なのですが、ガイナに含まれるセラミックはお椀型なんです。しかも、表面がデコボコしている。熱や音がセラミックの粒に当たってはね返す時、ボール状よりもお椀状の方がたくさんはね返せることはわかりますよね?これを中空セラミックと言います。」

高坂「表面積が大きくなりますもんね!そしてさらにその中に空気が含まれているということですね。」

仙波「そうです。原料となる土は企業秘密なのでわかりませんが、ガイナは周辺温度に適応する性質がある特殊セラミック層で構成されています。熱を均衡化し、熱の移動を抑える働きをするんです。」

高坂「先ほど、熱や音、とおっしゃいましたが...音もはね返すのですか?」

仙波「そうです。断熱塗料ガイナを家の内外に施工すると、下記のような快適な住環境づくりができるんですよ。ちょっと高いけどね(笑)。効果はすごいよ。初期投資をかけても、省エネで設備維持費は下がるからね。」

  • 寒さ対策・・・断熱・保温
  • 暑さ対策・・・断熱・遮熱
  • 騒音対策・・・遮音・防音
  • 臭い対策・・・空気質改善

仙波「それぞれ簡単に説明しましょう。
まず、寒さ対策。暖房で室内空気温度をいくら高くしても、壁や天井の温度が低ければ、熱は壁や天井から逃げてしまうんです。
しかしガイナを内装に施工すると、室内空気温度と壁や天井の表面温度が適応するため、熱の移動が最小限に抑えられます。つまり暖房効果が高まる。
そして外装に施工すると、外の空気温度と塗布表面温度が同じように適応する(低温になる)ことで熱の均衡化が起き、その表面での熱の移動を最小限に抑えます。つまり外部からの冷気の影響を遮って、室内の熱を外に逃がしにくくします。」

高坂「中の暖かさを逃がさないように、内装と外装からダブルの効果が期待できるんですね!」

仙波「まだ寒さ対策の効果がありますよ。同じ室内温度でも、壁と天井の表面温度が低いと体感温度は低くなるんです。例えば部屋の空気温度が30℃で、壁と天井の表面温度が10℃の場合、体感温度は何度だと思う?」

高坂「え、結構違うんですか...25℃くらい?」

仙波「20℃です。」

高坂「!」

仙波「でも、ガイナを施工した部屋で室内の空気温度が30℃の場合、壁と天井の表面温度も、室内空気温度に順応して30℃になります。すると体感温度も30℃になるんですよ。」

高坂「すごい。」

仙波「次、暑さ対策も同様です。
いくらエアコンで室内空気温度を低くしても、壁や天井の温度が高ければ熱は室内に侵入してしまいます。でもガイナを内装に施工すると、エアコンの冷気温度と施工面の表面温度がすぐに適応するので、熱の移動を最小限に抑えてくれるんです。つまり冷房効果が高まる。」

高坂「体感温度の話も同じですか ?!」

仙波「そうです。今度は逆ね。室内空気温度が20℃で、壁と天井の表面温度が40℃の部屋の体感温度は何度でしょう?」

高坂「うーん...30℃!」

仙波「あたり! では、ガイナを内装に施工した場合、体感温度は何度でしょう?」

高坂「同じように室内空気温度が20℃なんですよね、じゃあ、20℃!」

仙波「その通り!すごいでしょ。施工しているかどうかで、室内温度と体感温度が10℃も違っちゃうんだよ。」

高坂「実際の温度より体感が大事ですよね...。」


騒音と臭いの対策にも!!


仙波「すごいのは、断熱だけじゃないよ。騒音対策にもなるんです。
ガイナを塗った塗膜面はセラミックで隙間なく覆われているので、音を効率よく反射させ、空気で吸収を繰り返す構造になっています。塗膜面の内部に侵入してきた音も、振動を軽減することで音を小さくするんです。音って、振動だからね。振動を小さくすると音が小さくなる。交通量の多い車道に面している住宅など周囲の騒音が気になる場合にもおすすめなんですよ。」

高坂「いろんなものの伝わりを抑えてくれるんですね! そして、臭いも ??」

仙波「そう。ガイナは帯電性0.0なんです。」

高坂「帯電性?」

仙波「空気中にあるホコリやチリ、花粉などの汚濁物質は、プラスの電気を帯電することで空気中を浮遊しています。そしてこれらの汚濁物質は、静電気によって室内の壁や天井に付着します。
しかしガイナは帯電性が0だから、汚濁物質が付着しにくいんです。
さらに、ガイナに含まれる特殊セラミックが熱や光のエネルギーを受けると、遠赤外線放射性能によって遠赤外線を放出します。そして、遠赤外線は室内の空気に含まれる水の分子に作用してマイナスイオン化します。イオン化した水分が、浮遊した汚濁物質と結合して、空気中を浮遊しにくくする。
わかった?」

高坂「いや....(笑)。とりあえず、施工面には臭いがつきにくく、さらに空気中に漂いにくくしてくれることはわかりました!!すごく多機能ですね。」

仙波「他にも、防露効果や耐久性のアップも期待できます。水性で、不燃材料でもあるため、安全です。」


施工するなら...どうすれば?

高坂「ぜひ、施工したいです! 私は、家を建てる予定はありませんが!(笑) リフォームでもできるんですよね?」

仙波「もちろんです。クロスに傷みや汚れがなかったら、そのまま塗れます。」

高坂「施工としては、どこに塗るのがおすすめですか?」

仙波「可能なら、壁面と天井すべて。以外の全面に施工するのがおすすめです。そして、できれば外にも。」

高坂「費用はざっくり、どのくらいなんでしょうか」

仙波「ガイナは1缶14kg入りで6万円弱、2回塗りした場合、30〜35平米塗れます。塗り方も自由度が高くて、ハケ、ローラー、吹き付け、コテでも塗れます。水性なので、塗り方に合わせた適切な濃度で希釈できます。コテでも塗れるような、水分少なめの塗料にもできるのはガイナの特長のひとつですね。」

高坂「施工はどこに頼めばいいのですか?」

仙波「塗装、美装、リフォーム業者さんなど、全国に取扱店があるので、近所で探してみてください。一覧はこちらです。ちなみに、色もいろいろあるよ。」


高坂「結構カラフルですね!」

仙波「意外と色数があるでしょう?好みに合わせて選ぶことができます。」


断熱塗料で冷暖房節約!


仙波「宇宙技術を応用したガイナ、すごいでしょ。」

高坂「ロケットの先端に塗られる塗料の技術を家づくりに転用するとは...!」

仙波「話しきれませんでしたがメリットはまだまだたくさんあるので、検討してみて損することはないです。ちょっと高いけど、内装全面が無理なら、外に塗るだけでも効果があります。」


ありがとうございました!!


高坂「第1回のシーリングファン第2回の天窓第3回の冷風機能付き洗面所暖房機に続き、断熱塗料まで塗らなくては...。心地よい家づくりのために、できることは尽きませんね。」

仙波「初期費用はかかるけど、その後の冷暖房節約はかなりのもの。しかも1度塗れば10年経っても効果が持続することが確かめられています。
瓦棒屋根1,300平米にガイナを施工したある建物は、夏季の2階の温度が15℃低下する・エアコン稼働数の減少・冬季の暖房効率アップ・塗り替えのサイクル長期化などで、10年間合計で約820万円もの経費削減になった記録もあります。」

高坂「年間を通して、そして長い間、効果を発揮してくれるんですね。
今日もより良い家づくりの参考になりました! ありがとうございました。」


「室内環境改善のプロに聞く! 心地よい注文住宅のつくりかた」は、“医・食・住”から見る室内環境改善アドバイザー、株式会社養命(愛媛県新居浜市) の代表取締役社長・仙波正志さんに、心地よい家づくりの参考となる基礎知識を改めて詳しく解説いただく連載記事です。

次回もお楽しみに!


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この記事を書いた人

高坂類

ライター
1983年新潟県生まれ。早稲田大学人間科学部卒。 四国・愛媛県 新居浜市(にいはまし)に拠点を置くデザイン事務所 hink DESIGN(ヒンクデザイン)代表。 広告デザインとWeb制作を中心に、ライター、ラジオパーソナリティ、モデル、司会等、四国の生活をより楽しくしようと 幅広く活動しています。 四国の魅力発信プロジェクト「しこくらいふ」主宰。 激辛グルメサークル「にいはまスパイスガールズ」主宰。