中世へタイムトラベル!? 南イタリアのマッセリーア~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.1
世界中の様々な土地で、現地の家庭に滞在し、その暮らしや文化、人びとの生きる営みを体感し、伝える、”定住旅行”をライフワークとして活動している、ERIKOです。
旅では、より深く現地の人びとと交流し、理解を深めるため、ホテルなどの宿泊施設ではなく、現地のお家に滞在させてもらっている私は、これまで40カ国、74家族と過ごしてきました。私にとってお家は、家族と過ごす時間が最も多い大切な場所であり、またその国の文化や特徴が間近で見れる場所でもあります。
そんな南イタリアには、”マッセリーア”と呼ばれる、プーリア地方独特の農園領主の館が多く存在しています。私が滞在させてもらったお家もまさにそのマッセリーアでした。
カソ家は、お家を全部で3軒持っていて、季節やその用途によってそれぞれの家を使い分けています。弁護士であるお父さんと息子さんの事務所と併設された街の中にあるマンション、主に夏の休暇に利用する海辺のマンション、そして農作業などに使用するマッセリーアです。
エントランスから敷地の後ろまで歩いたら15分以上はかかってしまうほど広い敷地面積を持つカソ家のマッセリーア。たくさんの種類のフルーツやオリーブの畑があり、鶏、うさぎ、馬などの家畜のスペースを中心に、敷地内に屋敷が3棟立っています。
このマッセリーアが建てられたのは、約800年前。日本では、鎌倉時代に当たる頃です。一時期は誰も利用せず、放置している期間もあったそうですが、現在は建物の一部をリノベーションしたり、ピザを焼く部屋を増築したりして、頻繁に使われています。
また、これだけの広さの家を維持していくには、毎日たくさんの仕事を行わなければなりません。マッセリーアには、常に住み込みで2人の職人さんが、庭の手入れや家畜の世話、部屋の維持を年中常駐して行っています。
この場所を選んだカソ家の主人であるフランコさんは、土地選びについてこんな話をしてくれました。
「土地選びで大切なのは、以前そこに住んでいた人がどのような人生を送っていたかということです。例えば、金銭面に問題があったり、家庭がうまくいっていなかったり、人との付き合いで問題があるような何かマイナスな理由があった場合は、その場所は選びません。悪い運がその土地についているような気がするからです。なので土地や家を購入するときは、良いエネルギーを持っていた人が住んでいた場所を選ぶようにし、売りに出している人とよく話をするようにしています」
こちらがマッセリーアのエントランスです。誰もいない時には門は閉まっています。車の中からリモコン操作で門が開けられるようになっています。
こちらは中庭です。大体食事をするときはこのスペースを利用します。
南イタリアの人たちは、外で大勢で食事をするのが大好きで、またその時間を情報交換や友情を深める時間に使っています。夕暮れになると空のトライライトが美しく、家の雰囲気もまるで中世の時代に暮らしているような気分になります。
写真中央にある鐘は、食事が始まる前に鳴らし、広いマッセリーアのどこにいる人にも伝わるようになっています。まるで小さな村みたいですね。
こちらは家族が日中過ごしている場所。
リビングのような場所はなく、それぞれが好きな場所で過ごしています。夏の時期、プーリア地方の平均温度は約40度前後。湿気は少ないものの、日中はほとんどの人が外を出歩かないほど、暑い日々が続きます。
これはカソ家だけに限りませんが、イタリアは建物自体が古いものが多く、エアコンなどがついていない家がほとんどです。ですので、室内はほとんど日差しが入ってこないような設計になっていて、日中でも少し暗いほどです。また、どんなに暑くても窓を開けるのは厳禁。夜間に冷えた空気が逃げてしまわないようにするためです。窓を開けると熱風が入ってきて、逆効果になるので、夏場の日中は窓を閉め切ります。
ちなみに冬は暖炉を焚いて寒さをしのいでいるそうです。
カソ家のマッセリーアには、全部で部屋が8つありますが、どの部屋にもバスルームとトイレが付いています。
キッチンはイタリア人にとって、聖地とも言える場所。家庭によってはキッチンに侵入されたり、食器などを勝手に触られたりするのをとても嫌がるマンマ(お母さん)もいます。
カソ家のキッチンは、一般的な家庭のキッチンというより、レストランにあるような業務用的なキッチンです。家族5人に合わせて、お手伝いさん、コックさん、そして毎日のように訪れる来客の食事を作るためには、大きな鍋や広い材料を置く場所が必要です。
食事担当のお手伝いさんが中心となって、毎回の食事が作られています。そして、食材は畑で採れたものを使っているので全てオーガニックです。
カソ家の末っ子マリアンナは、今後このマッセリーアをB&Bや様々なイベントを行えるような空間にしていきたいそうです。
最近、ハイドロマッサージのお風呂やサウナを作ったばかり。
「イタリアにいた頃はマッセリーアは古くて、農作業や家畜を飼う場所というイメージしかなかったけど、海外で長く働いていたせいか、南イタリアのマッセリーアは伝統のある素敵な場所だと感じるようになりました」
こちらは、長男のアルフレッドさんの趣味でもある乗馬の道具が置いてある部屋。
イギリス式やアメリカ式など、馬の鞍や手綱にも色々と種類があるそうです。仕事が終わるとマッセリーアにやってきて、馬の手入れや乗馬を楽しんでいます。
家の中に点在しているアンティーク家具、昔使われていた農具、小物たちは現在のインテリアの一部となって、空間を演出しています。歴史あるマッセリーアで過ごす時間は、そのような過去とのコンタクトが呼び水となって、昔の人びとの生活が想像されます。
歴史の断片を感じる暮らしの体験、それがマッセリーアという場所です。
旅では、より深く現地の人びとと交流し、理解を深めるため、ホテルなどの宿泊施設ではなく、現地のお家に滞在させてもらっている私は、これまで40カ国、74家族と過ごしてきました。私にとってお家は、家族と過ごす時間が最も多い大切な場所であり、またその国の文化や特徴が間近で見れる場所でもあります。
南イタリア・プーリア地方の家、マッセリーアとは
今回ご紹介するのは、イタリアのプーリア地方、ルチェーラに住む、カソ一家のお家です。南イタリアは、イタリアで一番美味しいものが食べられる場所として知られており、地中海で取れる海産物や、オリーブオイル、種類豊富な果物や野菜がたくさん取れます。それ故に、農業が盛んに行われ、農家が多いのも特徴です。そんな南イタリアには、”マッセリーア”と呼ばれる、プーリア地方独特の農園領主の館が多く存在しています。私が滞在させてもらったお家もまさにそのマッセリーアでした。
カソ家は、お家を全部で3軒持っていて、季節やその用途によってそれぞれの家を使い分けています。弁護士であるお父さんと息子さんの事務所と併設された街の中にあるマンション、主に夏の休暇に利用する海辺のマンション、そして農作業などに使用するマッセリーアです。
エントランスから敷地の後ろまで歩いたら15分以上はかかってしまうほど広い敷地面積を持つカソ家のマッセリーア。たくさんの種類のフルーツやオリーブの畑があり、鶏、うさぎ、馬などの家畜のスペースを中心に、敷地内に屋敷が3棟立っています。
このマッセリーアが建てられたのは、約800年前。日本では、鎌倉時代に当たる頃です。一時期は誰も利用せず、放置している期間もあったそうですが、現在は建物の一部をリノベーションしたり、ピザを焼く部屋を増築したりして、頻繁に使われています。
また、これだけの広さの家を維持していくには、毎日たくさんの仕事を行わなければなりません。マッセリーアには、常に住み込みで2人の職人さんが、庭の手入れや家畜の世話、部屋の維持を年中常駐して行っています。
この場所を選んだカソ家の主人であるフランコさんは、土地選びについてこんな話をしてくれました。
「土地選びで大切なのは、以前そこに住んでいた人がどのような人生を送っていたかということです。例えば、金銭面に問題があったり、家庭がうまくいっていなかったり、人との付き合いで問題があるような何かマイナスな理由があった場合は、その場所は選びません。悪い運がその土地についているような気がするからです。なので土地や家を購入するときは、良いエネルギーを持っていた人が住んでいた場所を選ぶようにし、売りに出している人とよく話をするようにしています」
お家の全貌をご紹介!
それでは、お家を紹介しましょう!こちらがマッセリーアのエントランスです。誰もいない時には門は閉まっています。車の中からリモコン操作で門が開けられるようになっています。
こちらは中庭です。大体食事をするときはこのスペースを利用します。
南イタリアの人たちは、外で大勢で食事をするのが大好きで、またその時間を情報交換や友情を深める時間に使っています。夕暮れになると空のトライライトが美しく、家の雰囲気もまるで中世の時代に暮らしているような気分になります。
写真中央にある鐘は、食事が始まる前に鳴らし、広いマッセリーアのどこにいる人にも伝わるようになっています。まるで小さな村みたいですね。
こちらは家族が日中過ごしている場所。
リビングのような場所はなく、それぞれが好きな場所で過ごしています。夏の時期、プーリア地方の平均温度は約40度前後。湿気は少ないものの、日中はほとんどの人が外を出歩かないほど、暑い日々が続きます。
これはカソ家だけに限りませんが、イタリアは建物自体が古いものが多く、エアコンなどがついていない家がほとんどです。ですので、室内はほとんど日差しが入ってこないような設計になっていて、日中でも少し暗いほどです。また、どんなに暑くても窓を開けるのは厳禁。夜間に冷えた空気が逃げてしまわないようにするためです。窓を開けると熱風が入ってきて、逆効果になるので、夏場の日中は窓を閉め切ります。
ちなみに冬は暖炉を焚いて寒さをしのいでいるそうです。
カソ家のマッセリーアには、全部で部屋が8つありますが、どの部屋にもバスルームとトイレが付いています。
キッチンはイタリア人にとって、聖地とも言える場所。家庭によってはキッチンに侵入されたり、食器などを勝手に触られたりするのをとても嫌がるマンマ(お母さん)もいます。
カソ家のキッチンは、一般的な家庭のキッチンというより、レストランにあるような業務用的なキッチンです。家族5人に合わせて、お手伝いさん、コックさん、そして毎日のように訪れる来客の食事を作るためには、大きな鍋や広い材料を置く場所が必要です。
食事担当のお手伝いさんが中心となって、毎回の食事が作られています。そして、食材は畑で採れたものを使っているので全てオーガニックです。
カソ家の末っ子マリアンナは、今後このマッセリーアをB&Bや様々なイベントを行えるような空間にしていきたいそうです。
最近、ハイドロマッサージのお風呂やサウナを作ったばかり。
「イタリアにいた頃はマッセリーアは古くて、農作業や家畜を飼う場所というイメージしかなかったけど、海外で長く働いていたせいか、南イタリアのマッセリーアは伝統のある素敵な場所だと感じるようになりました」
こちらは、長男のアルフレッドさんの趣味でもある乗馬の道具が置いてある部屋。
イギリス式やアメリカ式など、馬の鞍や手綱にも色々と種類があるそうです。仕事が終わるとマッセリーアにやってきて、馬の手入れや乗馬を楽しんでいます。
マッセーリアの歴史を感じる暮らし
昔のこの地方の暮らしは、ほとんどの家が家畜を飼って、農作物を作ることが当たり前でした。家というものは現在のように快適な空間を追い求めるものではなく、暮らしを営んでいく場所だったのです。家の中に点在しているアンティーク家具、昔使われていた農具、小物たちは現在のインテリアの一部となって、空間を演出しています。歴史あるマッセリーアで過ごす時間は、そのような過去とのコンタクトが呼び水となって、昔の人びとの生活が想像されます。
歴史の断片を感じる暮らしの体験、それがマッセリーアという場所です。
ERIKO
モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
WEB : http://chikyunokurashi.com
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