地震に強い家を建てるなら「耐震等級3」が必須? 構造のプロに聞きました(前編)
みなさんこんにちは。ともこ@住宅ライターです。
突然ですが、南海トラフ地震の発生率は、30年以内に70~80%と言われています。ということは、これから家を建てたとして、住宅ローン返済期間中に「大地震はくる! 」と心構えをしておいた方が良いということが分かりますね。
2016年の熊本地震のような、震度7が2回も発生する大きな地震にも耐える家を建てておかないと、後悔することはもう目に見えています。
では、地震に強いと言われている「耐震等級3」の家とは何でしょう。本当に、最高レベルである「耐震等級3」が必要なのでしょうか⁉
ということで、構造のプロである佐藤実先生にお話しをうかがってきました。
佐藤実先生は、「株式会社M’s構造設計(https://www.ms-structure.co.jp/)」の代表であり、実務者向けの「構造塾」を主宰されています。住宅をはじめとした建物の構造計算をしつつ、講演会やセミナーの講師として全国を回られています。
それもこれも「日本中の木造住宅が地震で倒壊しないことを目指す! 」という熱い思いを胸に秘めていらっしゃるから。かっこ良すぎますね。
佐藤先生(以下敬称略)「よろしくお願いします」
ともこ「基本的なことをお聞きするのですが、佐藤先生が設計者の方々にずっと推奨されている構造計算とは何ですか?」
佐藤「構造計算は、住宅といった建物の構造部分にかかる荷重や積雪、風圧、土圧、水圧、地震、衝撃など、外からの力に対して安全かどうかを確かめるための計算です」
ともこ「なんだか難しそうですね。その構造計算は、そもそも住宅に必要なのですか?」
佐藤「必要です。戸建のような規模が小さめの建物の場合、建築基準法では必ずしも必要ということにはなっていないのですが、安全かどうか計算するのは当たり前だと思いますよ。命に関わってきますからね」
ともこ「なるほど~安全な家を建てようと思ったら構造計算は必須なんですね」
佐藤「耐震とあるように、地震に対してどれだけ強いかという性能のことです。耐震等級は1・2・3とあって、数字が大きくなるほど強くなっています」
ともこ「建築基準法では、耐震等級1でクリアになっていますが、耐震等級1ではダメなんですか? 」
佐藤「こちらの画像を見てみてください」
佐藤「これは、熊本地震で1番被害の大きかった益城町に建つ耐震等級1の木造住宅です。どうですか? 」
ともこ「……。完全に傾いています。かなりショックです」
佐藤「ですね。耐震等級1の家で、熊本地震クラスの地震が発生したとき、住人の命は守れるかもしれませんが、もう住むことはできない。ということが分かりますね」
ともこ「はい。住むなんてムリです。というか、中に入るのも怖いです」
佐藤「次は、こちらの画像を見てみてください」
佐藤「こちらは、益城町に建っている耐震等級3の木造住宅です。どうですか?」
ともこ「目立った外傷はなさそうです。今も住んでいらっしゃるんですか?」
佐藤「はい。地震後も変わらずこの家で生活されています。耐震等級3だと、住人の命はもちろん、家という財産も守り住み続けることができる。ということが分かりますね」
ともこ「もうよく分かりました。1と3では全然違う! だから、耐震等級3がいいと言われてるんですね。納得です」
佐藤「たくさん原因があるのですが、構造計算をしたり、申請をしたり、何かと手間がかかるのは事実です。造り手の方々のお話しを聞いていて感じるのは、コスト面かなと」
ともこ「コストですか」
佐藤「耐震等級3は、耐震等級1と比べると1.5倍の強度があります。その分コストも30〜50万円プラスになります」
ともこ「それはそうですよね」
佐藤「プラスになってしまうなら、住まい手さんは、建築基準法の耐震性能である耐震等級1でいいですってなってしまいますよね」
ともこ「はい。ただでさえ家は高額。どこでコストダウンしようか考えているはず」
佐藤「でも、家が崩れている写真を見ると、高くても耐震等級3がいい! となります。ということは、建てる側に少々問題があるんです」
ともこ「というと? 」
佐藤「耐震等級3にするための構造計算を、いまだにオプション扱いにしている会社があるんですね。その会社は、高額になると仕事がとれなくなってしまうと考えています。だから、構造でコストダウンを図ろうとする」
ともこ「そこはやめて欲しいです(泣)」
佐藤「車で考えてみると、ブレーキやエアバッグをオプションにしているようなものです」
ともこ「え? ブレーキ? いや、エアバッグだって、ドライバーの安全を考えて、今はどの車も絶対ついていますよ……」
佐藤「構造計算することは、そのくらい当たり前のことなんです」
佐藤「そうですね。だから、これから家を建てようと考えている方は、そのようなスタンスの会社を候補に入れた方がいいと思います」
ともこ「なるほど。きちんと構造計算をして耐震等級3を基準にしている会社ということですね」
佐藤「はい。まずはそこからです」
ともこ「佐藤先生、ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いします!」
地震で倒壊しかけているかなりショックな画像もありましたが、「耐震等級3ってやっぱり必要なんだ!」ということが、痛いほどよく分かりました。
そして、「耐震等級3を基準とした家づくりをしている会社へ依頼するのがいい! 」ということも見えてきました。
後編では、地震に強い家のメリットについて、もっとお話しを聞いていきたいと思います。どうぞお楽しみに!
突然ですが、南海トラフ地震の発生率は、30年以内に70~80%と言われています。ということは、これから家を建てたとして、住宅ローン返済期間中に「大地震はくる! 」と心構えをしておいた方が良いということが分かりますね。
2016年の熊本地震のような、震度7が2回も発生する大きな地震にも耐える家を建てておかないと、後悔することはもう目に見えています。
では、地震に強いと言われている「耐震等級3」の家とは何でしょう。本当に、最高レベルである「耐震等級3」が必要なのでしょうか⁉
ということで、構造のプロである佐藤実先生にお話しをうかがってきました。
構造のプロ 佐藤実先生はスゴイお方
佐藤実先生は、「株式会社M’s構造設計(https://www.ms-structure.co.jp/)」の代表であり、実務者向けの「構造塾」を主宰されています。住宅をはじめとした建物の構造計算をしつつ、講演会やセミナーの講師として全国を回られています。
それもこれも「日本中の木造住宅が地震で倒壊しないことを目指す! 」という熱い思いを胸に秘めていらっしゃるから。かっこ良すぎますね。
ところで構造計算って何?
ともこ「佐藤先生、今回はお引き受けありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」佐藤先生(以下敬称略)「よろしくお願いします」
ともこ「基本的なことをお聞きするのですが、佐藤先生が設計者の方々にずっと推奨されている構造計算とは何ですか?」
佐藤「構造計算は、住宅といった建物の構造部分にかかる荷重や積雪、風圧、土圧、水圧、地震、衝撃など、外からの力に対して安全かどうかを確かめるための計算です」
ともこ「なんだか難しそうですね。その構造計算は、そもそも住宅に必要なのですか?」
佐藤「必要です。戸建のような規模が小さめの建物の場合、建築基準法では必ずしも必要ということにはなっていないのですが、安全かどうか計算するのは当たり前だと思いますよ。命に関わってきますからね」
ともこ「なるほど~安全な家を建てようと思ったら構造計算は必須なんですね」
耐震等級ってなあに?
ともこ「続いては、チラシなどでもよく目にするようになってきた耐震等級についてお聞きします。この耐震等級とは何でしょう?」佐藤「耐震とあるように、地震に対してどれだけ強いかという性能のことです。耐震等級は1・2・3とあって、数字が大きくなるほど強くなっています」
ともこ「建築基準法では、耐震等級1でクリアになっていますが、耐震等級1ではダメなんですか? 」
佐藤「こちらの画像を見てみてください」
佐藤「これは、熊本地震で1番被害の大きかった益城町に建つ耐震等級1の木造住宅です。どうですか? 」
ともこ「……。完全に傾いています。かなりショックです」
佐藤「ですね。耐震等級1の家で、熊本地震クラスの地震が発生したとき、住人の命は守れるかもしれませんが、もう住むことはできない。ということが分かりますね」
ともこ「はい。住むなんてムリです。というか、中に入るのも怖いです」
佐藤「次は、こちらの画像を見てみてください」
佐藤「こちらは、益城町に建っている耐震等級3の木造住宅です。どうですか?」
ともこ「目立った外傷はなさそうです。今も住んでいらっしゃるんですか?」
佐藤「はい。地震後も変わらずこの家で生活されています。耐震等級3だと、住人の命はもちろん、家という財産も守り住み続けることができる。ということが分かりますね」
ともこ「もうよく分かりました。1と3では全然違う! だから、耐震等級3がいいと言われてるんですね。納得です」
なぜ、耐震等級3にしないのか?
ともこ「耐震等級3にした方がいいというのは一目瞭然でしたが、なぜ、全ての家が耐震等級3になっていないのでしょう」佐藤「たくさん原因があるのですが、構造計算をしたり、申請をしたり、何かと手間がかかるのは事実です。造り手の方々のお話しを聞いていて感じるのは、コスト面かなと」
ともこ「コストですか」
佐藤「耐震等級3は、耐震等級1と比べると1.5倍の強度があります。その分コストも30〜50万円プラスになります」
ともこ「それはそうですよね」
佐藤「プラスになってしまうなら、住まい手さんは、建築基準法の耐震性能である耐震等級1でいいですってなってしまいますよね」
ともこ「はい。ただでさえ家は高額。どこでコストダウンしようか考えているはず」
佐藤「でも、家が崩れている写真を見ると、高くても耐震等級3がいい! となります。ということは、建てる側に少々問題があるんです」
ともこ「というと? 」
佐藤「耐震等級3にするための構造計算を、いまだにオプション扱いにしている会社があるんですね。その会社は、高額になると仕事がとれなくなってしまうと考えています。だから、構造でコストダウンを図ろうとする」
ともこ「そこはやめて欲しいです(泣)」
佐藤「車で考えてみると、ブレーキやエアバッグをオプションにしているようなものです」
ともこ「え? ブレーキ? いや、エアバッグだって、ドライバーの安全を考えて、今はどの車も絶対ついていますよ……」
佐藤「構造計算することは、そのくらい当たり前のことなんです」
耐震等級3は必須というより普通
ともこ「これまでのお話しからいうと、耐震等級3にするための構造計算は何も特別なものではなく、住人の安心や財産を守るためには当然。ということが見えてきました」佐藤「そうですね。だから、これから家を建てようと考えている方は、そのようなスタンスの会社を候補に入れた方がいいと思います」
ともこ「なるほど。きちんと構造計算をして耐震等級3を基準にしている会社ということですね」
佐藤「はい。まずはそこからです」
ともこ「佐藤先生、ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いします!」
“地震から守ってくれる家”を当たり前に
いかがでしたか?地震で倒壊しかけているかなりショックな画像もありましたが、「耐震等級3ってやっぱり必要なんだ!」ということが、痛いほどよく分かりました。
そして、「耐震等級3を基準とした家づくりをしている会社へ依頼するのがいい! 」ということも見えてきました。
後編では、地震に強い家のメリットについて、もっとお話しを聞いていきたいと思います。どうぞお楽しみに!