中国・東北部の都市「瀋陽」の住宅事情とは?〜世界の家 vol.5

2017.10.31 高坂類
四国・愛媛から全世界に家づくり情報をお届け! ieny地域ライター高坂類です。

世界の家」シリーズ第4弾、本日は「中国・瀋陽(しんよう)の家」をご紹介します!


はじめに 〜高田さんファミリーのご紹介


まずは、お話をうかがう高田さんファミリーをご紹介!
日本人の妻・文筆家で編集者の高田ともみさんと、中国人の夫・張さん。8歳の娘さんがいらっしゃる3人家族です。

高田さんは2006年、中国遼寧省出身の夫と結婚。娘さんが4歳になる2012年に中国・瀋陽へ引っ越し、3年弱を現地で過ごされました。そのときの暮らしぶりを発信しようと開始したブログが「わたしの中国雑記帳」で、このブログをまとめた書き下ろし書籍を今年中に書肆侃侃房から発売予定。中国の骨董市で集めたお気に入りの雑貨をそっと販売する「わたしの中国雑貨店」も運営されています。

その後、娘さんの小学校進学に合わせて、母娘のみ日本に帰国。現在は中国で会社を経営される夫とは別居婚で、定期的に中国を行き来する2拠点生活をされています。

広い広い中国、その中で「瀋陽」の住宅事情はどのようなものなのでしょうか? さっそくお話を聞いてみましょう!


中国・瀋陽の住宅事情で驚いたことは?

高坂「高田さん、本日はよろしくお願いします! 中国の住宅事情で驚いたことなどをお聞きできればと思います。私は恥ずかしながら、瀋陽(しんよう)がどのあたりかも知らなかったのですが...。」

高田さん「よろしくお願いします! 瀋陽は中国の東北部にあって、交通経済の中心になっている都市です。人口800万人ほどの重工業の街で、東北部から北京に行くときに経由する場所です。」


高坂「ビルが立ち並んでいますね!」

高田さん「軍用機製造の重工業で栄えた街で、けっこう都会ですね。イメージとしては日本の名古屋みたいな感じでしょうか。住宅については、一軒家に住んでいるのは軍人や一部の富裕層だけだと思われ、マンション住まいの方が多いです。中国では結婚相手になる男性の必須条件の1つとして『資産としてマンションなどの不動産を持っていること』が求められることが多いようなのですが、驚いたのはマンションを購入するとき、中がまったく空っぽの石の部屋を買うようなんです!」

高坂「?! 」

高田さん「トイレも台所も何もない、内装も何もしていない、石でできた空っぽの空間を買うそうなんです。その際は、間取りも自分たちで決めて作るんですよ。」

高坂「へえ〜!どんな風に作るんですか?」


空っぽの石の部屋を、好きなように作る!


高田さん「この写真は、90年代に建てた夫の実家のマンションをリフォームしたときのものです。リフォームも、まずは全てぶっ壊して空っぽにして作っていきます。壊す作業も、道に座っている農民工さんに頼んで、ドッカンドッカン壊してもらうの(笑)。それを見上げる娘です。」

高坂「すっすごい。DIY感がすごいです!」

高田さん「内装に必要な部材は、それぞれ専門の市場があるので、そこで自分で安く仕入れてきて作ります。」


高田さん「夫の姉が照明器具の店をしているので、照明はそこで購入しました。タイルやトイレ、家の内装に必要なものはほとんど市場にあるみたいです。」

高坂「合羽橋みたいな...?! そういうスタイルで家づくりをされる人が多いのでしょうか?」

高田さん「最近の若い世代では、IKEAで丸ごとおしゃれに作ってしまう人たちも多いです。それだと平米にもよるけれど200万〜300万円かかると思われます。が、市場で1つずつ自分で仕入れて、施工は路上の農民工さんにしてもらうと、半額くらいで好きなように作れてしまうんですよ。」

高坂「なっなんと...! それは、自分でやりたくなりますね。」


マイナス20度!極寒の冬を乗り切る、国営の暖房器具


高田さん「それから瀋陽の冬はとても厳しく、11月頃から非常に寒くなり、マイナス20度もザラの極寒が続きます。この写真も実家のリフォーム時のものですが、左側の壁についているのが『暖汽(ヌワンチー)』と呼ばれる暖房器具で、これは国営のセントラルヒーティングシステムなんです。」

高坂「見た目からすると、オイルヒーターのようなものですか?」

高田さん「この暖房器具の中に、熱湯が送られてくるんですよ〜! ヌワンチーのための熱湯専用の配管が、水道管と同じようなイメージで各マンションに張りめぐらされているんです。」

高坂「!! 巨大な湯たんぽみたいなものなんですね!! 外がマイナス20度のときも、しっかりあたたまるんですか?」

高田さん「これが、すっごくあたたかいんですよ!冬は、室内では半袖でも大丈夫。」

高坂「へぇ〜! ヨーロッパみたいなんですね。」


日本人の妻に聞く!中国の家はどうですか?

(2014年、結婚10周年を記念して中国で結婚式をあげた高田さんファミリー。)

高坂「日本人の高田さんから見て、中国の家や住宅事情はどうですか?」

高田さん「移住当初はいろいろなカルチャーショックで、お腹を壊したりなんだりで1年は闘病しました(笑)。住宅については、日本と違って責任範囲がはっきりしているというか...、不動産は不動産業者、内装は内装屋、のようにきっちり分かれている印象です。不動産業者は石でできた空間だけを売っていて、それが日本とは違いますね。それから家のことだけではないんですが、何でも『安かろう悪かろう』で、安いものには絶対に何か落とし穴があります(笑)。」

高坂「それにしても、家づくりのものを何でも自分で仕入れて、農民工さんに施工まで発注する旦那さまの行動力にはびっくりです!」

高田さん「市場では好きなものが選べるだけでなく価格交渉もできますし、路上で『私は〜ができます』みたいな紙を持って待っている農民工さんは安い賃金で仕事を請けてくれるので、安価に済ませるにはいちばん賢い方法なんですよね。すごいな〜と思って見てました。中国では、何をするにも自分の強い意志が大事だとも思いましたね。

3年間のマンション暮らしで感じたのは、日本と違って公共意識があまりないこと!(笑) 日本なら、マンションで共用の階段にゴミを掃き出したらその後ちゃんと掃除しますよね。そういう意識が全然なくて、玄関からサーっとホコリを外に出したら、『あとは風 or 公共の道の掃除をしてくれる人が処理してくれるだろう』で、何も気にしないんですよ。これには驚きました。戸を閉めたらもう関係ない、って感じです。家族のいる家の中がいちばん大事!(笑)という印象です。」

高坂「ほお...。」

高田さん「私が出会った中国の方はみんな、家族関係を非常に大切にしています。家族がわいわいがやがやといっせいに食事することをとても重要視しているので、結婚10周年であげた結婚式はもちろん、お誕生日や出産のお祝いなど何かっていうと親戚が集まって円卓を回します。それがあまりに頻度が高くて最初はすごくめんどくさかったんですが、今では家族の結束や繁栄を大事に思う中国らしい文化だと思えるようになりました。
ちなみに夫には、私の日本の親戚がぜんぜん集まらなかったり家族間でもあまり連絡を取り合わなかったりするので『日本の家族関係は冷たい』とよく言われていましたね...。家族が大事、家の中が大事、というのは、住環境で体感した文化の違いですね。」

高坂「マンションなのに間取りから好きなように作れてしまう家づくりや、極寒を乗り切る国営の暖房器具『暖汽(ヌワンチー)』の存在...日本とはまったく違う住宅事情に驚きの連続でした! もし瀋陽に住むのなら、高田さんのブログを一読あれ!ですね。」

高田さん「実際、瀋陽に関する日本人向けの情報は、Web上にはとても少ないようなんです。『わたしの中国雑記帳』を見て連絡をくれた瀋陽住まいの日本人の方がけっこういて、嬉しかったですね。予定している書籍出版もその流れのひとつです。それから今年はすでに、瀋陽での日本人どうしの出会いから『月下群像』というZINEも作りました。『わたしの中国雑貨店』で取り扱っていますので、ご興味ある方はぜひ!」

高坂「高田さん、ありがとうございました!」


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この記事を書いた人

高坂類

ライター
1983年新潟県生まれ。早稲田大学人間科学部卒。 四国・愛媛県 新居浜市(にいはまし)に拠点を置くデザイン事務所 hink DESIGN(ヒンクデザイン)代表。 広告デザインとWeb制作を中心に、ライター、ラジオパーソナリティ、モデル、司会等、四国の生活をより楽しくしようと 幅広く活動しています。 四国の魅力発信プロジェクト「しこくらいふ」主宰。 激辛グルメサークル「にいはまスパイスガールズ」主宰。