木の家は燃えにくい?構造の専門家に聞く木造住宅のメリット(前編)
みなさんこんにちは。ともこ@住宅ライターです。
「家」と一口で言っても、いろんな構造がありますよね。説明を聞いても「結局どれがいいの?」なんて、さらに分からなくなったという人も少なくないのではないでしょうか。
完璧な人がいないのと同じように、この構造が絶対正解! というのもないわけで。視点を変えてみると、それぞれにメリット・デメリットはあるものなんですよね。
とはいえ、日本では多くの家が木造で建てられています。なぜでしょうか。
文化的に? それとも、ちょうどいいから?
ということで、今回は、私たちが持つ木の家のイメージを、読者のみなさんを代表して専門家に聞いてみました。
こちら(「地震に強い家を建てるなら「耐震等級3」が必須? 構造のプロに聞きました」 前編 / 後編)でも対談していただいた佐藤実先生は、「株式会社M’s構造設計(https://www.ms-structure.co.jp/)」の代表であり、実務者向けの「構造塾」を主宰されています。住宅をはじめとした建物の構造計算をしつつ、最近ではYouTubeなどでセミナー動画も公開されています。
すべては「日本中の木造住宅が地震で倒壊しないことを目指す!」という熱い思いを持たれているから。なかなか真似できることではありません。
佐藤先生(以下敬称略)「よろしくお願いします」
ともこ「早速ですが、単刀直入にお聞きします! 木造は、燃えやすくて倒れやすいというイメージを持っている人が多いと思うのですが」
佐藤「ですよね。でも、実は“木”って火に強いんですよ」
ともこ「そうなんですね!(たしかにBBQは着火剤必須)」
佐藤「木材は、ある程度の断面があれば、燃え尽きるということはなくて、構造体としては意外と強いんですよ」
ともこ「どういうことですか? 」
佐藤「火事で考えたときに、木の家だから燃えるわけではなくて、室内にあるカーテンや家具など、可燃物から燃えはじめているんですね。これは、木造も鉄骨造も一緒です」
ともこ「木の家=燃えると決めつけていました……」
佐藤「30年ほど前の木造だと、通気性がよく空気が流れやすい構造だったので、室内の可燃物が燃えると、あっという間に火がまわっていたでしょう。燃え広がりやすい造り方をしていましたから。だから、木造は燃やすいというイメージがあるんでしょうね」
ともこ「なるほど! 」
佐藤「現在の木造は、きちんと石膏ボードが貼られて壁が破れにくくなっていて、気密性(隙間が少ない)も昔に比べたら高い。こういった点から、それぞれがファイヤーストップになっているので、燃えにくくなっています」
ともこ「ファイヤーストップ!! 今と昔では建て方も変わっている。木造だから燃えやすいというわけではないんですね。わかりました」
ともこ「木造だから燃えやすいというわけではない。ということは、断熱性も高いと思っていいのでしょうか」
堤先生(以下敬称略)「そうですね。単純に、木は熱を伝えにくい性質を持っているので、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べたとき、断熱性に優れた骨組みではあります。
逆に、鉄は熱を伝えやすいから、断熱を一層がんばらないといけませんね」
ともこ「断熱に関してだけ言えば、鉄より木の勝ち」
堤「ただ、木そのものが断熱材になるというわけではないんです」
ともこ「どういうことですか? 」
堤「つまり、木は“断熱を得やすい建材”だと思っていただけたら」
ともこ「わかりました! 熱を伝えにくい建材であって断熱材ではないということですね。」
堤「補足なのですが、木造だから断熱材はそれほど入れなくてもいいという発想の造り手もいます。でも、これは間違いです」
ともこ「そうなんですか!? そっそれは、家を建てるときに必ず確認しなくてはいけませんね! 」
佐藤「ここは、少し難しいところですね。まず、強度を明確にしないことには、強いのか弱いのか判断がつきませんよね」
ともこ「はい」
佐藤「強度を明確にしようと思ったら、構造計算をしないと分かりません」
ともこ「なるほど。構造計算ですね」
佐藤「前回でもお伝えしましたが、住宅といった小さな(4号建築物)建物は、法律上、構造計算までは求められてなくて、簡易的な構造検討(仕様規定)のみでオッケーなんです。
しかも、構造検討の申請も計算書の提出が省略できる(4号特例)ため、 設計者によっては、構造検討までも省いてしまうケースがあります」
ともこ「省略できるからといって、そこまでされるとツライです」
佐藤「そうですね。強さを明確にしないままでいるから、木造=弱いといったイメージを持たれてしまうんですね」
ともこ「なるほど(勘で設計されるのだけは避けたい!)」
佐藤「気をつけないといけないのは、設計者のなかには、無条件に『木は強い』と言う人もいるということ。
でも、大きな空間や、背の高い建物をつくろうと思えば、鉄骨造や鉄筋コンクリートが向いています。コストも含めて」
ともこ「きちんと用途を考えなくてはいけないということですね! 」
佐藤「重さの比で言えば、たしかに、木は軽くて強いという面もあります。でも、構造体として見てみると、木は万能であるわけではないんですね」
ともこ「なんとなくわかります」
佐藤「木は万能ではないけれど、得意な部分を生かせば、住宅の建材としてはメリットがたくさんあります。
これまでお話しした、火に強いこと、断熱性が高いことなどなど。木を建材として使うということの恩恵は他にもたくさんあります」
ともこ「なんでしょう! ワクワクします。
とその前に。はじめに戻りますが、つまり、構造計算をしてきちんと耐震をすれば、木造でも強度の高い家を建てることができるということですね」
佐藤「そうですね。たとえ木造2階建てでも、構造計算をしてくれる会社かどうか見極めてください」
ともこ「わかりました!!! ありがとうございます」
木造住宅に対するイメージが変わった人もいれば、「やっぱりそうだよね」と納得した人もいるでしょう。
私は、造り手によっては、科学よりも勘やイメージを優先させる人が未だにいるという事実が興味深かったです。
そして、施工会社を選ぶ際、気をつけないといけない点だと感じました。
後編では、さらに木の家のメリットを教えていただきますよ~どうぞお楽しみに!
ともこ@住宅ライターでした。
「家」と一口で言っても、いろんな構造がありますよね。説明を聞いても「結局どれがいいの?」なんて、さらに分からなくなったという人も少なくないのではないでしょうか。
完璧な人がいないのと同じように、この構造が絶対正解! というのもないわけで。視点を変えてみると、それぞれにメリット・デメリットはあるものなんですよね。
とはいえ、日本では多くの家が木造で建てられています。なぜでしょうか。
文化的に? それとも、ちょうどいいから?
ということで、今回は、私たちが持つ木の家のイメージを、読者のみなさんを代表して専門家に聞いてみました。
構造の専門家 佐藤実先生はこんな方
こちら(「地震に強い家を建てるなら「耐震等級3」が必須? 構造のプロに聞きました」 前編 / 後編)でも対談していただいた佐藤実先生は、「株式会社M’s構造設計(https://www.ms-structure.co.jp/)」の代表であり、実務者向けの「構造塾」を主宰されています。住宅をはじめとした建物の構造計算をしつつ、最近ではYouTubeなどでセミナー動画も公開されています。
すべては「日本中の木造住宅が地震で倒壊しないことを目指す!」という熱い思いを持たれているから。なかなか真似できることではありません。
木造は火に強いってホント?
ともこ「佐藤先生、耐震にスポットを当てた記事では、家づくりを進める上で大切なことを教えていただき、ありがとうございました。今回もどうぞよろしくお願いします」佐藤先生(以下敬称略)「よろしくお願いします」
ともこ「早速ですが、単刀直入にお聞きします! 木造は、燃えやすくて倒れやすいというイメージを持っている人が多いと思うのですが」
佐藤「ですよね。でも、実は“木”って火に強いんですよ」
ともこ「そうなんですね!(たしかにBBQは着火剤必須)」
佐藤「木材は、ある程度の断面があれば、燃え尽きるということはなくて、構造体としては意外と強いんですよ」
ともこ「どういうことですか? 」
佐藤「火事で考えたときに、木の家だから燃えるわけではなくて、室内にあるカーテンや家具など、可燃物から燃えはじめているんですね。これは、木造も鉄骨造も一緒です」
ともこ「木の家=燃えると決めつけていました……」
佐藤「30年ほど前の木造だと、通気性がよく空気が流れやすい構造だったので、室内の可燃物が燃えると、あっという間に火がまわっていたでしょう。燃え広がりやすい造り方をしていましたから。だから、木造は燃やすいというイメージがあるんでしょうね」
ともこ「なるほど! 」
佐藤「現在の木造は、きちんと石膏ボードが貼られて壁が破れにくくなっていて、気密性(隙間が少ない)も昔に比べたら高い。こういった点から、それぞれがファイヤーストップになっているので、燃えにくくなっています」
ともこ「ファイヤーストップ!! 今と昔では建て方も変わっている。木造だから燃えやすいというわけではないんですね。わかりました」
木は断熱性に優れている?
このパートでは、取材に同席いただいた省エネと構造の両立で「人も家も倒れない社会」の実現を目指す、堤太郎先生にお聞きします。ともこ「木造だから燃えやすいというわけではない。ということは、断熱性も高いと思っていいのでしょうか」
堤先生(以下敬称略)「そうですね。単純に、木は熱を伝えにくい性質を持っているので、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べたとき、断熱性に優れた骨組みではあります。
逆に、鉄は熱を伝えやすいから、断熱を一層がんばらないといけませんね」
ともこ「断熱に関してだけ言えば、鉄より木の勝ち」
堤「ただ、木そのものが断熱材になるというわけではないんです」
ともこ「どういうことですか? 」
堤「つまり、木は“断熱を得やすい建材”だと思っていただけたら」
ともこ「わかりました! 熱を伝えにくい建材であって断熱材ではないということですね。」
堤「補足なのですが、木造だから断熱材はそれほど入れなくてもいいという発想の造り手もいます。でも、これは間違いです」
ともこ「そうなんですか!? そっそれは、家を建てるときに必ず確認しなくてはいけませんね! 」
木は強いのか弱いのか
ともこ「ここからは、木の強度についてお聞きしたいと思います。ずばり、木造は強度が高いのでしょうか、低いのでしょうか」佐藤「ここは、少し難しいところですね。まず、強度を明確にしないことには、強いのか弱いのか判断がつきませんよね」
ともこ「はい」
佐藤「強度を明確にしようと思ったら、構造計算をしないと分かりません」
ともこ「なるほど。構造計算ですね」
佐藤「前回でもお伝えしましたが、住宅といった小さな(4号建築物)建物は、法律上、構造計算までは求められてなくて、簡易的な構造検討(仕様規定)のみでオッケーなんです。
しかも、構造検討の申請も計算書の提出が省略できる(4号特例)ため、 設計者によっては、構造検討までも省いてしまうケースがあります」
ともこ「省略できるからといって、そこまでされるとツライです」
佐藤「そうですね。強さを明確にしないままでいるから、木造=弱いといったイメージを持たれてしまうんですね」
ともこ「なるほど(勘で設計されるのだけは避けたい!)」
佐藤「気をつけないといけないのは、設計者のなかには、無条件に『木は強い』と言う人もいるということ。
でも、大きな空間や、背の高い建物をつくろうと思えば、鉄骨造や鉄筋コンクリートが向いています。コストも含めて」
ともこ「きちんと用途を考えなくてはいけないということですね! 」
佐藤「重さの比で言えば、たしかに、木は軽くて強いという面もあります。でも、構造体として見てみると、木は万能であるわけではないんですね」
ともこ「なんとなくわかります」
佐藤「木は万能ではないけれど、得意な部分を生かせば、住宅の建材としてはメリットがたくさんあります。
これまでお話しした、火に強いこと、断熱性が高いことなどなど。木を建材として使うということの恩恵は他にもたくさんあります」
ともこ「なんでしょう! ワクワクします。
とその前に。はじめに戻りますが、つまり、構造計算をしてきちんと耐震をすれば、木造でも強度の高い家を建てることができるということですね」
佐藤「そうですね。たとえ木造2階建てでも、構造計算をしてくれる会社かどうか見極めてください」
ともこ「わかりました!!! ありがとうございます」
木造建築のメリットを学んで家を作ろう!
いかがでしたか? 建築で木を使うメリットや、気を付けなくてはいけない点をお伝えしてきました。木造住宅に対するイメージが変わった人もいれば、「やっぱりそうだよね」と納得した人もいるでしょう。
私は、造り手によっては、科学よりも勘やイメージを優先させる人が未だにいるという事実が興味深かったです。
そして、施工会社を選ぶ際、気をつけないといけない点だと感じました。
後編では、さらに木の家のメリットを教えていただきますよ~どうぞお楽しみに!
ともこ@住宅ライターでした。