太陽とうまく付き合う家、スペイン・アンダルシア地方~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.13


太陽に愛された土地、スペイン南部アンダルシア地方。年中寒さとはほぼ無縁のこの土地は、ヨーロッパで一番アフリカに近い地域です。日本でも長年人気のある、フラメンコ発祥地でもあり、イスラムの歴史と融合した独特な街並みが広がっています。

時に夏場の気温が50℃以上にもなるこの土地は、建物が密集して立ち並んでいます。
暑さを凌ぐために、壁を白くし光を反射させ家の中で涼しくするのもこの土地ならではの工夫の一つ。また、街中の狭い通りは、影が出来やすいように工夫されています。


アンダルシア地方の州都、セビージャから南に13kmのところに、コリア・デル・リオという人口3万人の小さな村があります。スペイン語でコリア川という意味です。
ここにはかつて、伊達藩からスペインの交易交渉を行う目的で、慶長遣欧使節団の支倉常隆を率いる何人かの侍が着岸し、滞在したと推測されている場所です。
コリアにはその子孫と言われる、“ハポン(スペイン語で「日本」)”という苗字を持つ人が、約700人暮らしています。

今回は、その一人であるフランシスカ・カルナバル・ハポンさんのお家を訪ねました。

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美術館のような空間

村の中心部の賑やかな通りに面しているスランシスカさんが暮らすお家は、アンダルシア地方の典型的な作りをしています。
この土地で暮らす人びとが大切にしているのが、光を上手に活用すること。柔らかい自然光を上手く取り入れることで、室内を明るくします。
家選びをする時も、光が綺麗に入るかどうかは重要な決めての一つとなります。


どの家もエントランスは広くはありませんが、一度家の中に入ると入り口からは想像できない広々とした空間が広がっているのが特徴です。
エントランスや側には鉄格子があるのもこの土地ならでは。そして、大抵どの家にも家が建てれらた年のプレートが飾られています。


ほとんどの家にはポストがついていないので、取手に挟むか、もしくはドア下から滑らせて中に入れます。


家は縦長で、中間部と一番奥にパティオ(中)があります。ベッドルームは大抵一番奥に部屋に配置されており、パティオから自然光が柔らかく入ってくるようになっています。
光を取り入れていても、壁が高くつくられているため、家の中に直射日光が入っていることはありません。

以前紹介した南イタリアとこの土地の気候はほぼ同じなのに、イタリアは家全体が暗く、太陽をなるべく取り入れないように工夫された家の作りをしていました。気候が似ていても、土地が変われば全く価値観が違うのも面白いです。


こちらはリビング。スペイン人の家のインテリアに欠かせないのが、絵や芸術。
どの家を訪ねても必ずといっていいほどインテリアに取り入れられています。


こちらはフランシスカさんのベッドルーム。白と黒のコントラストが効いた、博物館みたいなお部屋ですね。


一見おしゃれな物入れの扉にしか見えないですが、この中には、なんと洗濯機が収納されています。家全体のイメージを損なわない、ちょっとした工夫ですね。

フランシスカさんを初めとするスペイン人が大切にしているのは、先祖代々使われていた家具
スペインの家には、祭壇や先祖の写真を祀ることは稀です。彼らが実際に使っていた家具や物を通じて、その思い出を話したりします。
先祖が大切に使っていたものは、彼らにとって愛情を感じられる物の一つなのだそう。


スペイン人の家へのこだわり

スペインでは、全住宅の86%が持ち家、賃貸は14%ほどだと言われています。
最近になって、家を借りるという人が増えてきているようですが、まだまだスペイン人にとっては、家は買うもの。自分が所有しているという安心感をとても大切にしているように思います。

また、住宅を選ぶ時の大切なポイントがあります。それは、実家に近くいつでも兄弟や家族に会えること、職場や学校に近いことです。
日本人のように、仕事を理由に自分の生まれ故郷から完全に離れることはあまり考えず、親が暮らす生活領域で自分の人生設計を考えるのが通常です。
自分の好みの家や土地に暮らす以上にスペイン人にとっては重要視されることです。フランシスカさんの家も、三人の息子が済む家のすぐ近くにあります。お孫さんたちは毎日会いにきて、週末には交代で泊まりにきます。

結婚をして新しい住まいを設ける時にも独特のこだわりがあります。
多くの場合、新居を構えた段階で、基本的に使う家具や最低限必要なものを用意して生活を始め、徐々にインテリアなどを足していきますが、スペイン人は違います。
生活を始める時には、家具はもちろん、インテリアや飾りものも完璧な状態してスタート。日常的に家族や友人などを招く機会が多いのが関係しているからでしょう。
家の内装などが中途半端な状態で人を招いたりすると、姑から「こんな未完成な状態で人を招くなんて」と言われたりすることもあるのだとか。
日常生活は極めてフレキシブルな性格のスペイン人ですが、彼らの暮らしかたから生じる家のあり方には独特のこだわりがあるように思います。

スペイン人の家々を訪問するだけでも、1つと同じようなものはなく、美術館巡りをしているようで楽しめます。


ERIKO

モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
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定住旅行家 ERIKO

モデル・定住旅行家
モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。