家族が夕方集まる家 キューバ・ハバナ~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.11

カリブ海に浮かぶ日本の本州の半分ほどの面積を持つ、キューバ。

2016年にアメリカと国交が正常化したり、2017年には革命指導者フィデル・カストロが死去したことでも話題になりました。社会主義国でありながら、窮屈で暗いイメージを持っている人は少なく、観光地としても人気のある国の一つです。
また、教育水準や医療技術が発展していることでも知られており、キューバにはエイズ感染者は0人と言われています。

キューバの首都は、Havana、ハバナと呼ばれる街。現地の公用語であるスペイン語は、Hの音を発音しないので、“アバナ”と読みます。
カリブ地域における最大の都市で、約200万人の人びとが暮らしています。世界遺産に指定されている旧市街地は、昔から変わらないキューバ独特の雰囲気を堪能でき、街には50年代のアメリカやソ連車が行き交っています。
まるでタイムカプセルに入ったような、時間が止まったような場所にいる不思議な感覚を体験できる土地です。

キューバには過去に2度ほど定住旅行(現地の家庭に滞在し、暮らしを共にして、その生活や文化、生き方を伝える活動)を行いましたが、近年、観光客の増加に合わせて、ホテルの建設ラッシュが続き、公園などでインターネットの接続が可能になりました。
また、家を売買できるようになった他、18歳以下の子どもも、親が同伴すれば海外へ渡航することもできるようなったりと法律なども変わってきています。様々なことが少しずつ変化しているキューバですが、社会主義制度に変わりはなく、人びとの生活も初めて訪問した時と大きな変化はありません。

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フランシス・アラカワさん宅をご紹介!


ハバナ市に暮らす、フランシス・アラカワさんのお宅をご紹介したいと思います。
名前で、「あれ?日本人?」っと思われた方もいると思いますが、キューバ人であるフランシスさん(写真左)の苗字はアラカワ。彼女は日系3世です。

中南米は世界で一番大きな日系人コミュニティが存在しており、約160万人の日系人が生活していると言われています。日系社会というと、ブラジルやペルーなどを思い浮かべますが、実はキューバにも青年の島(Isla de juventud)を中心に約1000人の日系人が存在しています。また、2018年は日系移民120周年を迎えます。

フランシスさんの家には、お母さんのサダミさんと弟夫婦、フランシスさんの家族3世代が2世帯住宅に暮らしています。
住まいは公園が目の前にあるマンションの5階にあるのですが、エレベーターは大体止まっていて、徒歩で5階まで上り下りしています。キューバのお年寄りは、普段からこういった不便な生活の中で鍛えられているので、体力も気力もしっかりしています。

ご近所さんともみんな顔見知りで、しょっちゅう別の階の家に行き来し、コーヒーを片手に世間話に花を咲かせています。


電話のベルが響く。スッキリとした家族の空間


広々としたリビング。棚の上には家族の写真が飾ってあります。ここにいると、ひっきりなしに聞こえてくるのは電話のベル。
我々が普段メールで済ませてしまうことも、インターネットがないので、電話連絡が主なコミュニケーションツール。1日20回以上は電話のベルが鳴り響きます。


こちらはリビングに置いてある、蚊除け。コーヒーの出がらしを水に浸して置いておくと蚊が来ないのだそうです。


社会主義のキューバでは、長年宗教の信仰が禁じられていた時代がありましたが、1998年に当時のローマ法皇であったフアン・パブロ二世がキューバを訪れ、フィデル・カストロと対話したことがきっかけで、カトリックへの信仰が公に認められるようになりました。
キューバでは主にカトリックとサンテリアと呼ばれる宗教が信仰されています。

サンテリアはブラジルのカンドンブレに似た宗教で、サンテリーア、エスピリティスム、パロ、ババラオ、ガンガ(カスエラ)と呼ばれる5つのラーマ(道)があり、それぞれに守ってくれる聖人がいます。
人生の節目や災いなどがあった時に、クラドール(治す人)のところへ行き、助言をもらいながら、いろいろな儀式が行われたりします。
フランシスさん家には、サンテリアのお部屋があり、お供えものやお祈りなどに使用しています。家族にとっても一番神聖で大切な部屋であると言えます。


キューバにも赤飯が!? 定番料理の“アロスコングリ”


キューバの家のほとんどの家は、ガスコンロのキッチンが使われています。

キューバの定番料理といえば、“アロスコングリ”と呼ばれる小豆ご飯。日本の赤飯にとってもよく似ています。ちなみにキューバでは、料理中にお塩をに落とすと縁起が悪いと言われています。


キューバには、庶民が利用するスーパーはほぼありません。街には市場や小さな野菜屋や果物店はありますが、食料の調達は主に“ボッテガ”という場所で行われます。キューバは食料配給制度というものがあり、無料で一定の食料を受け取ることができるのです。
パン、油、パスタ、小麦粉、卵など様々なものが配給されますが、肉や魚類は配給頻度がとても少なく、釣りをして調達したり、人から分けてもらったりしていました。


美しい夕日を眺める団らんの時間

キューバの日差しは日本と比べ物にならないほど強いです。キューバでは傘は日よけのために使われるのが一般的なほど、特に夏場は強烈な太陽光が照りつけ、温度も高くなります。
アラカワ家にはエアコンが何室かに完備されていますが、キューバの一般家庭はエアコンがないことも多く、扇風機や水浴びをして暑さをしのいでいます。


日本では陽の当たる南向きの家が好まれやすいと思いますが、キューバでは強い日差しの関係で、西向きの家が好まれる傾向があります。
夕方になると、大きな夕日をベランダから眺めることができ、その夕日を見に家族が自然と集まり、団らんの時間が始まります。


ERIKO

モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
WEB : http://chikyunokurashi.com
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定住旅行家 ERIKO

モデル・定住旅行家
モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。