エアコンはドリーム空調機?建築家 松尾和也氏に聞く「健やかな暮らしができる家」最終話

2018.05.19

住宅ライターの箕岡智子(ともこ@住宅ライター)です。
この連載は、書籍「ホントは安いエコハウス」(日経ホームビルダー編)の著者である建築家の松尾和也さんに、健やかな暮らしができる家について解説いただくシリーズです。今回は、第5話!ついに最終話となります。

今回は予告どおり、健やかな暮らしができる家と相性バツグン&超省エネな冷暖房機器である「エアコン」について教えていただきましょう。

と、その前に、最終話なので今までの内容を簡潔におさらいしてみます。

→健康を守るために暖かい家にしましょう。

→冬の日射は取り入れて、夏の日射はさえぎる設計にしましょう。

→断熱性能を表すQ値を判断基準にしましょう。

→気密性能を表すC値と、耐震等級3は、これからの家に必須!

思い返してみても、かなり参考になる濃いお話ばかりでしたね(自分で言っちゃってますけど)。
いつの日か、今まで教えていただいたような「健やかな暮らしができる家」に住んでみたいものです。

【家づくりの大事なことがグッとわかる!松尾和也氏に聞くシリーズはこちら】


松尾和也さんってこんな人


松尾和也(Kazuya Matsuo)さんプロフィール

有限会社松尾設計室 代表取締役(平成18年4月1日~)。1975年 兵庫県出身。1998年九州大学工学部建築学科卒業(熱環境工学専攻)。JIA(日本建築家協会)登録建築家。一級建築士。APECアーキテクト。2005年サスティナブルTOKYO世界大会で「サスティナブル住宅賞」受賞。「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」がモットー。設計活動の他、「日経アーキテクチュア」「日経ホームビルダー」「建築知識」「新建ハウジング」等の専門誌への執筆活動や「断熱」「省エネ」に関する講演も行なっており、受講した設計事務所、工務店等は延べ5000社を超える。2009年パッシブハウスジャパンを立ち上げ、理事としてドイツの最先端省エネ建築の考え方を、日本の気候条件に合わせる形で普及促進活動を行う。日本エコハウス大賞の審査員も務める。著書には「ホントは安いエコハウス」「あたらしい家づくりの教科書」がある。
松尾さんの講演活動についてもっと知りたい人は第1話をご覧ください。


箕岡智子(以下智子)「松尾さん、ついに最終話です。なんだかさみしいですが、今回もよろしくお願いします。」

松尾和也さん(以下敬称略)「最終話もよろしくお願いします。」


エアコンは、なぜドリーム空調機なの?

松尾設計室が手がけたM様邸。延べ床面積133.31㎡。Q値は1.29、C値は0.5。14畳用のエアコンを設置。
智子「松尾さんの書籍には、エアコンの実力を知るというパート(章)がありますね。エアコンのことを夢の設備機器とまで書かれていますが、なぜそこまでオススメしているのですか?」

松尾「まず、空調には、暖房、冷房、除湿、加湿の4つがあります。」

智子「はい、4つ。(空調をそのように考えたことなかった)」

松尾「エアコンは、この4つのうち、加湿を除いた3つの役目を果たしてくれます。」

智子「そういえば、エアコンのリモコンには、冷房、除湿、暖房の3つのボタンがあります。」

パナソニック製エアコンのリモコンの場合。
松尾「1台で3役をこなせる冷暖房設備は他にありません。だからドリーム空調機なんです。」

智子「なるほど。エアコンってそんなに優秀だったんですね!テレビのように身近な存在すぎて気がつかなかったです。」

松尾「しかも、光熱費も安く、エアコン自体の価格も、機能の割に安い家電です。量産されていますからね。ただ、エアコンの能力を生かすも殺すも、建物次第です。」

智子「建物次第!つまり、今まで教わってきた家のことですね?」

松尾「そうです。断熱と気密がきちんとできた家だと、効率よく省エネに空調管理してくれます。」

智子「つまり、健やかな暮らしができる家には、エアコンがぴったりなんですね。」

※詳しくは、松尾和也さん著「ホントは安いエコハウス」をご覧ください。数値を用いて説明されています。


エアコンはどこに?

突然ですが、問題です。
下の画像は松尾設計室が設計したM様邸です。
エアコンは、どこに設置してあるか分かりますか?


智子「松尾さん、答えをお願いします。」

松尾「階段の下です。」

分かりますか?ここです!

階段下収納のところに配置。
図面で見ると、こちら!


家の中央エリアに位置する。エアコンから出る風が循環しやすいよう工夫されている。

エアコンといえば、天井に近い位置というイメージですよね。ですが、M様邸の場合、1階のエアコンは階段の下です。
なぜこのような場所にあるのか、紐解いていただきましょう。


空気の流れを活用した設置場所

智子「M様邸のエアコンはこの1台ですか?」

松尾「小屋裏にもう1台あるので、2台ですね。冬は1階の階段下にある1台がベースで、夏は小屋裏にある1台がベースになります。だから実際、使うのは1台ずつみたいな感じです。
ダクティング(配管工事)とか、いろいろ考えると2台に分けた方が安上がりだし、シンプルにできます。」

智子「そうなんですね!てっきり1台だけの方がいいのかと思ってました。」

松尾「2台設置した方が、効率がいいんですよ。暖かい空気は勝手に上がってくれるし、冷たい空気は勝手に下がってくれるんで。」

智子「なるほど、気球のようなイメージですね。空気の流れをうまく活用すると、1階の足元と、小屋裏、2箇所の設置がいいということなんですね。
M様邸のような設計のパターンは、松尾設計室ではよくあるんですか?」

松尾「そうですね。100まではいかないけど、50は余裕で超えてますね。」

智子「それだけ効率のいい造りなんですね。
エアコンは季節によって使い分けているとのことでしたが、1階のエアコンは冬用でしたね?」

松尾「基本は冬用ですが、夏も風呂上りの熱い時とか、家に帰ってきて熱い瞬間には、予備で運転してもらうこともありますけどね。それは、あくまで予備です。」

智子「基本は1台、その時々で2台運転。そういった活用方法で、快適な室温を保っているんですね。よく分かりました。」


デザインは後からついてくる

智子「松尾さん、エアコンを格子戸の中に設置されていますが、これは、デザイン性を良くするためですか?」

松尾「デザイン性は、結果としてついてくるものであって、この場所にあるのは、やっぱり足元があったかいっていうのと、ここから出る暖気が、洗面、脱衣、トイレまでいくんですよね。
普通、洗面、脱衣、トイレの空調って諦める場合が多いじゃないですか。でも、ヒートショックが起きやすいのは、むしろ、洗面、脱衣、トイレの方が多いですから。」

【ヒートショックについてはこちらをご覧ください】

智子「デザイン性は結果としてついてくるって名言だと思います。デザインよりも、健康を考慮するのは、健やかな暮らしができる家の基本でした。だから、1階は階段下の足元にエアコンが設置されているんですね。」

松尾「そうですね。でも、ヒートショックを予防するために、やろうと思えば洗面や脱衣、トイレに床暖房を敷くこともできます。でも、そんなに設備投資できませんよね。お金のことなど色々とバランスを考えると、結果こういうスタイルに落ち着きますね。」

智子「とはいえ、空間にまとまりがあるというか、やっぱりデザインも洗練された印象です。」

M様邸の玄関。スリットガラスから差し込む光、間接照明、造作の靴箱、おもてなし用の和室の配置など、機能性とデザイン性が共存。

松尾「造作家具を多用しているのも一因だと思います。すっきりと納まりがいいですから。」

智子「機能美もあり、室温は家中一定、しかも省エネでって、M様が羨ましいです。」

松尾「そうですか。こういうことが求められている時代だと思っています。」

智子「松尾さん、最終話も新しい気づきをいただき、ありがとうございました。」

松尾「こちらこそ、ありがとうございました。読者のみなさんは、楽しい家づくりを!」

<まとめ>
エアコンは、実はとても優秀な家電だということが分かりましたね。その実力を発揮させるには、やはり断熱・気密が大切だということが分かりました。
また一歩、健やかな暮らしができる家に近づけた気がします。

ちなみに、私の住むアパートのエアコンがいつもフル回転で、時々プシューとか言って、何だかしんどそうなのは、断熱も気密もとれていないからなのかもしれない…ということにも気がついてしまいました泣※個人の感想です。

さて、建築家の松尾和也さんに、健やかな暮らしができる家について解説いただくシリーズは、今回でおしまいです。前回の繰り返しになりますが、これまでのお話を家づくりに役立てていただけると幸いです。

最後になりますが、エアコン本来のパワーを取り戻すには、エアコンクリーニングを忘れてはなりませんよ。エアコンに頼らなくていいこの時期に、ぜひエアコンクリーニングをおすすめします。夏は混むらしいので!詳しくはこちらの体験談をご覧ください。


松尾設計室WEBサイト:http://www.matsuosekkei.com
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