家に住むことが仕事になる!? メキシコ~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.10

こんにちは、定住旅行家のERIKOです。
今回は、メキシコのお家をご紹介していきます。

2017年の冬に全日空が日本からの最長路線を開通させ話題となった、メキシコ。去年は大地震があったことでも記憶に新しい国です。
その際には、日本から救助隊が派遣され、現地のメキシコでは、その活躍に大きな注目が集まりました。2016年には日本企業が現地法人を増やしている国で第4位に選ばれており、以前よりメキシコへ渡航する日本人の往来が盛んになっているように感じます。
また、メキシコは日本がアジア以外で初めて平等条約を結んだ国で、歴史的にも関係の深い国であり、メキシコには多くの日系人も暮らしています。

メキシコは、アメリカ合衆国から南へ伸びた大きな国と地図で確認できます。面積は日本の約5倍。多民族国家で、メキシコには全部で31州、1連邦区があります。そこではスペイン系や先住民族、クリージョと呼ばれる混血の人たちが暮らしています。

現地の家庭で暮らしを体験している、定住旅行家の私は、中南米縦断25カ国プロジェクトを行った際に、メキシコにも定住しました。


今回ご紹介するお家は、メキシコの中で5つ目に大きな州であり、太平洋岸に面したオアハカ州のプエルト・エスコンディードに住む、ディマール・クラウディアさんとリアルドさんのお宅です。

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 独特な開放感漂う港町“プエルト・エスコンディード”

プエルト・エスコンディードはもともと、プント・エスコンディード、スペイン語で”隠された地点”と呼ばれ、海賊たちが宝を隠していたという伝説のもとにその名が付いていました。隠れ家的な漁村でしたが、近郊で採れるコーヒーの輸出を始めたことから、プエルト(港)と呼ばれるようになったそうです。
ある時期、飲み水の確保が困難だったこの地域は、多くの村人たちが去っていきましたが、1930年以降に現れた、ギジェルモ・ロハス・ミハンゴス氏の動きによって、コーヒーの輸出が盛んになり、移住者も増え、重要な町へと発展を遂げていったのだそう。現在は、約4万5千人の人たちが住む港町となっています。

またここは、知る人ぞ知るサーフィンのメッカです。街には多くのサーファーやヒッピーたちが暮らしており、独特な開放感が漂っています。
プエルト・エスコンディードの海岸には、主に6つのビーチがあるのですが、その中でも特に有名なのが、シカテラ海岸。ここはベストシーズンの5月~11月にかけて、10mを越す波が立ち、サーフィンの国際大会なども行われています。私も滞在中に約10mの波を海岸で見ましたが、その勢いは圧巻で、地球が大きな深呼吸をしているように感じました。

この街には、サーフィンスクールも多くあり、外国人がサーフィンの短期留学で多くやってきます。私も滞在中、初心者用に指定されたビーチで、毎朝朝5時からレッスンを受けていました。


 暮らすことが“仕事”になる……?


クラウディアさんとリアルドさん(写真左)は、首都であるメキシコシティ近隣で生まれ育ったのですが、実は彼らが出会ったのはメキシコではありません。
二人とも20代の頃、何年も世界中を放浪してたのだそうで、その旅の途中のモロッコで出会ったのだそう。そして二人の旅が終わったあと、メキシコで再会し、結婚したのだそうです。彼らの間には、シャダニちゃんという一人娘ができ、現在は3人で暮らしています。
こちらが彼らが暮らす家。とっても華やかで立派な外観です。


ですが、実はこの家、クラウディアさんとリアルドさんの持ち家ではないのです。彼らはなんと、この家に暮らすことを仕事にしています。

「メキシコには、家を長期不在にすることは法律で禁止されているの。この辺りは外国人の別荘地になっていて、セカンドハウスがたくさんあるのだけど、彼らはバケーションの時にしか使わないから、人を雇って住ませている人が多いのよ。私たちの家もその一つよ。無料で住みながら給料をもらうのって少し不思議でしょ。ただ、家主がここへ来るときは、私たちは家を空けなければならないから、メキシコシティの近くの実家に戻っているの。色んな場所に家があるのって楽しいわよ」
ということで、彼らは家を管理するという名目で住み込みで働いているということだったのです。


雨は天然のシャワー!? ゲストルームはまさかの壁なし……

それでは、とっても素敵でワイルドなお家の内観をご紹介しましょう!


まず、家に入って飛び込んでくるのは、開放的な空間と家の中央にあるプールです。
プールがある部分は完全に吹き抜けになっており、太陽の光と心地よい風が注ぎます。もちろん、雨の日などは容赦なく雨粒が降り注ぎますが、それも涼しくなっていいのだそうです。

家全体は、2階建ての作りになっており、1階が主な住居スペースとなっています。家事はクラウディアさんが担当していますが、小さなお子さんがいるため、週に2回お手伝いさんを雇い、育児と家事をサポートしてもらっています。
お手伝いさんと言うと、日本ではなかなか馴染みがないですし、見方によっては育児や家事をしっかりできていない、と思われてしまうこともあるようです。
しかし、メキシコや多くの中南米の中流階級以上の家庭では、お手伝いさんを雇うことは当たり前で、自分に無理をすることの方が悪いことだと言う見方が一般的です。


こちらが私が泊まらせてもらった、2階にあるゲストルーム。よくご覧ください、なんと、壁がないのです。笑
壁がない部屋に泊まったのは、後にも先にもここだけです。滞在中に雨が激しく降った夜があったのですが、睡眠中にずぶ濡れになりました。
そのことを話すと、「天然のシャワーね!」と笑われましたが、彼らの感覚では、自然を近くに感じられる空間=贅沢という考えがあるので、ゲストだった私に一番いい部屋を提供してくれたのだと思います。ちなみに、奥にある緑の扉は、バスルーム&トイレです。

メキシコ人は、人を家に招いたり、招かれたりすることが多く、日頃からたくさんの人が家を出入りしたり、泊まりにきます。
ですので、どの家にも必ずゲストルームが設けられており、いつ誰が泊まりにきても大丈夫なようにしてあるのです。
フレンドリーでザ・ラテン系のメキシコ人らしい、家の特徴ですね。


ERIKO

モデル・定住旅行家 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
WEB : http://chikyunokurashi.com
インスタグラム:erikok1116

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この記事を書いた人

定住旅行家 ERIKO

モデル・定住旅行家
モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。