南米のパリ、ブエノスアイレスに暮らすアーティスト・マウリシオのお家~定住旅行家ERIKOが住んでみた、世界のお家 vol.6

日本から2万キロ離れた南米大陸、アルゼンチン。南半球に位置するこの国は、日本が冬であるこの時期は真夏の季節となります。
アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスの夏は暑く、気温は30℃以上となり、日によっては日本以上に暑い日が続くこともあります。

南米というと、サッカーが強い、だだっ広い土地、または、先住民族が住んでいるというイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
実際、南米の国々の都市部は非常に発展しています。その中でもアルゼンチンは白人社会で、ヨーロッパを思わせる街並みから、南米のパリとも言われています。
街のあちこちに本屋やカフェがあり、どこからともなくタンゴのメロディーが聞こえてきて、文化の街というのが感じられます。

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大都会のオアシスに暮らすマウリシオさん


そんなアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに暮らしている、アーティストのマウリシオ・クラウさんのお家をご紹介したいと思います。

マウリシオさんは、長年通信会社の社長として働いていましたが、昔からの夢を叶えるべく、早期退職をして、美術大学に通い、現在はアーティストとして活躍されています。
彼の目的は、芸術を生活に取り入れることの大切さをビジネスマンを中心に伝えていくこと。自分がビジネスマンだった経験を生かして、様々な企業などで啓蒙活動を行っています。また、数年前には日本の木版画教室もオープン。
芸術を広めていくために、ビジネスマン時代に培ったマネージメント能力を発揮して活躍しています。

彼が住んでいるのは、急速に開発が進んでいるプエルト・マデーロ地区。
プエルトはスペイン語で“港”を意味しますが、その名の通りこの地区には港があり、プライベートヨットやボートが停泊しており、また隣のウルグアイまで船も出ています。
ブエノスアイレスの観光名所の一つで、おしゃれな雑貨屋やカフェ、レストランが立ち並び、たくさんの人たちで賑わっています。


「このマンションを購入した時は、この地区は廃墟のようになっており、誰も魅力を感じていませんでした。でも、この地区が開発されるという話を聞いていたので、今後はたくさんの人が訪れるような場所になると直感し、購入を決めました」

マウリシオさんが暮らすマンションは、港のすぐ側にあり、また徒歩3分で大きな公園にもアクセスできます。マンションは全棟で180室あり、住居や会社としても多く利用されています。
また、建物内には自由に使用できる会議室やジム、プールなどが併設されています。


世界で暮らしたマウリシオさんの家選びの基準

彼に家選びの基準や家に対する思いを聞いてみました。

「僕の家選びの基準は、緑や自然が近くにあり、走ったり、自転車で散歩に行くことができることです。また、静かであるということもとても大切です。ブエノスアイレスは大都会でどこに行っても喧騒が聞こえるので、心が静まる場所であることも重要視しています。
あと、安全であるということも重要です。僕の友達には、強盗に入られて悲惨な経験をした人が何人かいます。やっぱり家というには、そう言った心配をせずに暮らせること、そして、なんと言っても帰りたいと思え、楽しめる場所であることが大切だと思います」

彼はマンションを隣同士で2軒購入し、その間の壁を取り払って1つの家にし、住居スペースと、ゲストルーム、アトリエスペースに分けて使用しています。


こちらはリビング。日差しが差し込む明るい空間です。
マウリシオさんがビジネスマン時代に駐在や出張で訪れた国で出会った家具たちがそのままインテリアに使われています。彼のお気に入りは、メキシコの家具なんだそう。


地下にある共用のプール。マンションの中にあるとは思えない、まるでリゾート地のホテルにいるような気分になります。水の温度も高めでした。


こちらは、彼の家宝でもある、アンティークのレコードプレイヤー。
70年前のものだそうで、マウリシオさんのお父さんの形見だそうです。今でもちゃんと音が鳴るそうで、チャイコフスキーなどのクラシックを聴いているそうです。


ダイニングキッチン。マウリシオさんの家には敷居がほとんどなく、全てが同じ空間で繋がっています。


こちらは、アルゼンチンの人たちが必ず持っているマテ茶セット。
中にマテのお茶っぱを入れて、“Bombilla(ボンビッジャ)”と呼ばれるストローのような物をさして、お湯を注いで飲みます。マテ茶は、隣国のウルグアイ、パラグアイ(テレレと呼ぶ)、ブラジル南部でも飲まれている国民的な飲料です。
お肉を食べることが圧倒的に多い彼らにとっては、ミネラル、鉄分、カルシウムが豊富なマテ茶は、飲むサラダとして日常のなかで手放すことの出来ない飲み物となっています。

マウリシオさんの生活は、アルゼンチンでは上流階級に当たるものだと思いますが、現在の生活は彼の両親から引き継いだものでもなく、自ら作り出したものです。

自分のやりたい活動を行っていくには、たくさんの障害や苦労がつきまといます。彼はそれをいつでも学びと捉え、多くのことを失いながらも前を向いて歩いていく姿は、私も勇気づけられました。
そんな人生を歩む彼だからこそ、自分の精神が休まる家は暖かさに包まれているのだと思います。


ERIKO

モデル・定住旅行家。モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。
WEB : http://chikyunokurashi.com
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モデル・定住旅行家
モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、ジョージア、イタリア、北海道利尻島、三重県答志島などで、74家族との暮らしを体験。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。「日経トレンディネット」、「不二家 ERIKO&ペコちゃんの旅」で連載中。