見落としがちな住まいと保険・第1回 損害保険

2017.10.13

住宅を持とうと思い立ったが吉日。
間取り、設計、門、庭、マイカー等々、夢は広がる。
しかし、避けて通れないのがお金の問題。それも住宅ローンではなく保険の問題だ。問題というよりも大切なことと換言した方が良いだろうか。
そんな見落としてしまいがちな保険の問題を三級ファイナンシャルプランニング技能士の記者が徹底取材。記者の目と、その道のプロに取材して読者の皆さんに役立つ指針を示す。
題して『見落としがちな住まいと保険』。2回にわたりお届けする。第1回目建物そのものの保険。そう、「損害保険」についての話だ。


まずは保険のお勉強から

まず、保険とはどういうものなのかを改めてお勉強しておこう。
保険には大きく分けて生命保険と損害保険がある。

保険というのは「転ばぬ先の杖」、「もしもの時の安心」と形容されるように、保険事故があって初めて保険金が給付される(支払われる)。事故と言っても交通事故のような物理的なことばかりではなく、担保される事実のことを言う。言い換えれば「保険会社が保険金を支払う」ことを言う。
つまり、自動車保険であれば文字通り交通事故が保険事故だが、生命保険の場合は人の死亡が保険事故ということになる。もちろん災害やけが、火災や地震、疾病(しっぺい:病気のこと)も保険事故である。
保険事故が起こった時に支払われるのが保険金。そして、その掛け金のことを保険料という。保険料を払い込む義務のある人が保険契約者で、その保険契約を引き受ける人が保険者(保険会社)、保険契約の対象となる人を被保険者という。
おおざっぱに言うと、人の死亡が保険事故な保険契約が生命保険で、偶然な事故による損害を補填するのが損害保険である。そして、年金保険(個人年金等)は人の生存が保険事故ともいえる。

細かいことを言えばきりがないので、この辺にするが保険の概要がお分かりいただけたであろうか。
ここまで理解していただければ、「なーんだ。家の保険って損害保険じゃん。だったら生保は関係ないな」とピンときた方はよく理解していると思われる。
しかし、そうはいかないのが一生に一度の夢のマイホーム。ヒントは「住宅ローンの返済は長い」のである。そのあたりのお話は第2回を参照していただきたい。


損害保険はどこで掛けても同じ?

では、記者の解説はこれくらいにして、専門家にご登場いただこう。株式会社SPRINGS代表取締役の角昌夫氏は、鳥取県米子市の保険代理店を営む専門家中の専門家だ。保険専門の代理店なので生命保険も損害保険も取り扱う。


角氏に話を聞いた理由の大きな要因は氏がMDRTの会員であるからだ。
MDRTは生命保険の専門家による世界組織で、MDRT日本会によれば次の通りの説明がなされている。

1927年に発足した Million Dollar Round Table (MDRT) は世界69の国と地域の500社以上で活躍する、62,000名以上(2017年7月現在)の会員を有する、卓越した生命保険と金融サービスの専門家による国際的かつ独立した組織です。
MDRT会員は卓越した商品知識をもち、厳しい倫理基準を満たし、優れた顧客サービスを提供しています。また、生命保険と金融サービス業界の最高水準として世界中で認知されています。
引用元:MDRTとは | 一般社団法人 MDRT日本会 公式サイト

つまり、記者のようなファイナンシャルプランナーとは次元の違う専門家組織のメンバーなのである。そして、生保も損保も扱う代理店ならではのノウハウと顧客に寄り添う企業姿勢をよく知っているからこそ、お願いしたのだ。


--今日はお忙しいところ、ありがとうございます。早速ですが最初に損害保険についてお尋ねいたします。家に関する保険といいますと大きく分けて、火災、家財、地震という認識でいいのでしょうか?

「モノとしての家自体ということであればそういうことだと思います」

--これらの保険は保険会社によって違いはあるのでしょうか?あるいは、ほぼ同じとみていいのでしょうか?

「商品的な構造としてはどこも近いと思います。で、ちょっと面白い話としては地震保険ってありますでしょう?あれは国の制度で原則50パーセントまでしか出ないってご存知でしたか?」

--え、そうなんですか?知りませんでした。

「たとえば2000万円の建物であれば地震保険の上限は1000万円なんですよ。たとえ全壊したとしてもです。それを2倍にする特約とか保険というのはあるんですよ。今、自然災害が多いじゃないですか。そういうリスクが高まっていますから、そのような特約を選ぶという選択肢はあるんです。
しかし、販売が少ないといいますか、広がっていないというか…」

--それは保険会社が言わないんですか?

「そういう面もあると思います。リスクが高いので保険会社が受けたがらないという面もありますし、またリスクが高ければ保険料がものすごく高くなりますよね。ただ、保険の仕組みとして相互扶助の原則というのがありますので、数が出れば保険料は下げられるはずなんですよ。ですから、数が出るようにもっとアピールできる仕組みはないものかなとは、客観的には思います」


--知っておいた方がいいということですね。

「そうですね。ただし、保険料が高くなるので、その点をどう見るかということですね。あとは、建物もそうなんですが、額(補償額)の設定の仕方、たとえば高額設備のソーラーパネルとかですね。そういったものをどう評価するか、もし事故が起きたときにどんなアドバイスを得られるかということが重要だと思うのです」

--もう少し具体的に教えてください。

「これは生命保険と損害保険の一番の違いなんですが、保険事故が発生してから査定するのが損害保険なんですよ。生命保険は入るときに査定が終わっているんですよね。※
ですので、実際に保険事故が起きたときに、査定する人によって評価や支払額が変わるんですよ」

※(記者注:生命保険の死亡保険であれば死亡したという保険事故で保険金はいくら支払われるというのは最初から決まっているが、自動車事故の場合は事故が起きて初めて車の修理金額の査定をすると考えればわかりやすい。死亡という保険事故はだれが査定しても変わりようがないが、自動車の損害は査定する人によって修理金額は変わる。)

--そういえばそうですね。どうすればいいのですか?

「難しい問題ですね。一番いいのはさまざまな想定でチェックリストを用意して聞いてみることですかね。信頼できる担当者から入ることです。聞けば保険会社もそれに応じて準備しますからね。保険の種類をフルラインでそろえてもらって、外してもいい保険は何なのかを見極めることです。
たとえばマンションの5階で一般的に水害はないですよね。でも、水害や地滑り、土砂崩れなどで流れてしまうと、それは水害なんです。本当に5階で水害の保険は必要ないのか?ということを考える必要があります。もっとも地震や地震に起因する液状化現象で倒れた場合は地震保険ですけど、いずれにしても『5階だから水害はいらないですね』で、終わってしまっていいのか。ただ単に広さや購入金額だけで見るのではなくて、立地や背景までを含めてきちんと担当者に判断してもらえるかどうか、またその知識を持ち合わせているかどうかだと思います」※

※(記者注:保険の内容、補償範囲、特約等ついては保険会社の商品によって相違があるので、詳細は保険会社もしくは担当者に問い合わせる。)

--そのほかに注意する点はありますか?

「そうですね。もし保険事故が起きたときには保険金のお支払いが発生しますが、その判断基準や支払い基準をきちんとわかっているか、もしくはわかる人にちゃんとつないでくれるかだと思います。そういう意味では結論として、どこの保険会社に入るかというよりも、誰から入るかの方が重要な気がします」

第2回へ続く

※写真はすべて記者撮影

古川智規
元金融マンで住宅メーカーでの営業経験もある三級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人資産相談業務)。旺盛な好奇心で何でも書く。ウェブメディアや雑誌にも執筆。プレスリリースの監修や社内誌等の執筆も行うプロライター。