多くの建物で採用されている地震に強い耐震天井とは?

2016.08.25 ieny編集部
今まで大きな地震が起こった際に、様々な建物の天井が落下し、たくさんの被害が出ていたことが後の調査で分かりはじめてきました。そのようなことから耐震天井が注目され、多くの建物で使われるようになっています。ここでは一般的な天井の構造や地震時の状態、耐震天井を採用するメリット・デメリット、天井落下の対策についてご紹介します。


耐震天井とは?


天井の構造には、「吊り天井」と「直天井」の2種類があります。「吊り天井」は、天井裏の構造体から格子状の枠組みを吊り下げて、表面に石膏ボードなどの天井材を貼るという構造になっています。一方の「直天井」は、上部階の面の下にそのままクロスを貼るか塗装・吹付仕上げをした構造です。天井裏には、照明や空調、換気システム、断熱・吸音・遮音材などが格納されるため、多くの建物は「吊り天井」構造を採用しています。地震発生時に「吊り天井」は、ブランコのように揺れますので、壁に衝突して壊れたり、各部材の結合部分が変形により外れてしまい、落下してきます。天井の重量は1平方メートルあたり7~60kgほどですので、500平方メートルの天井なら3.5~30トンにもなります。そこで、壊れにくく地震に強い「耐震天井」が開発されました。

耐震天井のメリット・デメリットとは?


大地震の際に公共施設の天井が広範囲に落下しているニュースを目にした人も多いでしょう。耐震設計の新しい体育館やショッピングモールでさえも、天井がもろくも落下したのです。もともと天井には耐震基準が設けられていませんので、どんなに重い部材でも吊り天井として使われていました。度重なる大地震の被害により、天井の構造についても見直されています。耐震天井は、設計の際に想定した程度の震度では、揺れによる落下や破損が起こりません。斜め補強材によって揺れを抑制し、クリップなどでパーツを補強し、隙間を設けて壁との衝突を防ぐことにより、優れた耐震性を持ちます。耐震天井にすることにより、地震時の天井落下を防ぐことができます。このように、安心安全な耐震天井ですが、通常の天井よりも施工に手間がかかるため、工期が長くなり人件費もかさみます。また、耐震天井は壁との隙間を開けなければなりませんので、防音・遮音性能を保つのは難しくなる点もデメリットとして挙げられます。

天井落下の対策は?


天井落下対策には「クリップ」と「ブレース」、「クリアランス」という3つのポイントがあいます。まずは「クリップ」ですが、これはクリップなどのパーツをしっかり固定・補強し、部材自体の強度を高めることです。そして「ブレース」は、筋交いを取り付けることにより、天井の揺れを抑えます。さらに「クリアランス」では、壁との間に隙間を設けて衝突を防ぐことです。これらのポイントが1つでも欠けていたり、手薄な施工になったりすれば、莫大な損傷を負わせてしまう可能性が出てきます。それら3つのポイントをクリアすることで、安心・安全な耐震天井になるのです。

まとめ

このように、耐震天井は地震による天井落下を未然に防ぐことができます。地震大国日本と称されるほどに地震が身近な国なので、地震対策は重要です。耐震天井にはメリットだけではなくデメリットもありますので、目的や予算、必要性などと一緒に考慮しましょう。その際に、3つの天井落下対策をクリアしているかどうか確認してみてください。

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この記事を書いた人

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