愛猫と暮らす家づくり~注文住宅でとりいれるべきは何?

2022.11.30 烏田千洋
愛猫との暮らしを、猫にとっても人にとっても快適で健康的かつ楽しくするためには、どのような家づくりをすればよいでしょうか?

注文住宅で“猫と暮らす家”を建てる際、備えたい設備や注意点、オススメのポイントを「猫専門建築士」清水満さんに聞きました。



猫の安全第一!「脱走防止対策」が最優先

猫と暮らす家というと、真っ先に「キャットウォーク」や「ステップ」が思い浮かびますが、何よりも一番に考えるべきは猫の「脱走防止対策」。うっかり家の外に飛び出してしまわないよう、愛猫の安全のための備えが大切です。

「配送業者さんや飼い主の帰宅時などに玄関ドアからスルリと出てしまったり、器用に引き戸や網戸を開けて出て行ってしまったりと、戸建て住宅は猫が脱走してしまう場所がたくさんあります。先ずは脱走防止対策を考えてあげることが、猫と暮らす家づくりの基本です」(清水さん、以下同)

具体的には、次のような対策が考えられます。


窓の脱走防止対策


  • ロックできる網戸(量販店で販売している網戸ロックをDIYしてもよい)の設置
  • 樹脂コーティングネットやステンレス製ネットなど、ペット対応網戸の設置
  • の室内側に格子戸を設ける
窓の格子戸例(清水さん提供写真)


玄関の脱走防止対策


  • 廊下と玄関の間に、猫の様子が分かる格子や透明なガラスなどが入ったドアを設ける
廊下と玄関の間に、脱走防止のドアを設置する例(清水さん提供写真)


  • 既製品のドッグ(ペット)ゲートを玄関ドアにぴったり近づけて設置する
玄関ドアの脱走防止策の例(清水さん提供写真)

簡易的な対策ですが、こうすることで帰宅時に玄関ドアを開けた時、意識を一時的に猫に向ける事ができます。

猫はドアが開いた瞬間、飼い主などにジャンプをしてくることはありません。ゲートの前で待っている猫を確認して、気をつけて中へ入れば脱走防止には充分対応できます。

こうしたハード面の対策は出来ますが、小さな子どもやお年寄りがいるご家庭だとドアが開けっ放しになってしまいがちで、毎日の暮らしの中では対応が難しい面があるのも事実です。

普段から家族間で猫に対する配慮を確認することが大切です。



猫にとって安全な家にするためにできること

猫にとって安全な家にするために考えたいことは、脱走防止の他にもあります。


落下防止対策


リビングの「吹き抜け」は解放感があって素敵ですが、高所に設置するキャットウォークは猫の安全を考えると「あまりオススメしていません」と清水さん。

リビングや階段室の吹抜けにキャットウォークやステップを設置すると、猫の毛や嘔吐物などを清掃する際に脚立やはしごなどを使って高所作業することになり、飼い主が危険です。

また、猫が着地や落下した地点に家具やモノ、段差がある場合は受け身が取れないので、打撲や骨折の危険があります。さらに、病院などに行くために捕獲する場合や、地震が起こった際など、怖がって高い場所に上がってしまうと捕まえることが難しくなります。

高所にキャットウォークを設置する場合、落下防止ネットなどを張って対策をとるといいでしょう。設置場所の高さは椅子に乗って手が届く範囲に作りましょう。


浴室・キッチンの侵入防止対策


水を張った浴槽に猫が落下して溺れてしまう事故は、みなさんが思っている以上に起きています。キッチンも刃物やコンロの火など、猫にとって危険なモノがいっぱい。水栓を猫が開けてしまって、水が出しっぱなしになっていたなんてことも……。

そんな事故を防ぐために、浴室やキッチンに猫が侵入しないようにしておくことが大切です。

浴室ドアは開けっ放しにしない。もしくは浴槽に水を張っておかない。オープンキッチンではなく、猫が簡単に入れない工夫をする。キッチン侵入防止対策としてガラスなどの建具を間仕切りとして多く使えば、キッチンからリビング・ダイニングを見渡せる開放感も演出できますよ。

猫の侵入防止を工夫したキッチン例。キャットウォークには、猫の安心や楽しみのためのさまざまなしかけが施されている(清水さん提供写真)


猫のトイレ容器を置く理想的な場所はどこ?

猫のトイレは、「飼い主の目が届きやすいリビングに置いてほしい」と清水さん。

猫の健康をチェックするのは、うんち・おしっこの観察が基本。飼い主の目が届きやすいリビングにあれば、猫がトイレに頻繁に行くような行動をした場合も早く気付きます。

ちなみに、そのような場合は泌尿器系の病気の可能性があるので注意しましょう。また、多頭飼育の場合はどの猫が排泄したかも分かりやすいです。

逆にNGなのは、洗濯機の近くや階段下など不意に音が鳴る場所です。猫がビックリして、二度と使ってくれなくなってしまう可能性があります。

窓がないトイレや脱衣洗面室など、真っ暗闇になる場所も不向き。暗闇が怖いのは猫も人間も同じです。対策として、足元にほのかな光が出るセンサーライトなどを設置するといいでしょう。

猫の排泄物は強烈な臭いがします。臭いの対策として猫トイレ用のスペース近くに小さい換気扇を設置するのも一案です。

小さな換気扇を設置した猫用トイレスペース例(清水さん提供写真)


電源コンセントの位置は、気にするべき?

多頭飼育の場合、そのストレスからコンセントにおしっこかけるという行動をとることがあります。テリトリーの主張、マーキングのためにも行うスプレー行為ですが、かける位置はから約25~30cmの高さになります。コンセントの位置はそれより高めに設置しましょう。

電気コードをかじってしまう猫もいて、感電する危険があります。人間の使い勝手を考慮すると、家具で隠れない程度の45~90cmくらいの高さがよさそうです。


取り入れると猫が喜ぶ設備とは?

キャットウォーク・キャットステップ


猫は犬のように床だけではなく上下左右3Dで活動し、テリトリーの確認で生活空間を回遊する動物です。そのため、キャットウォーク・キャットステップを設置してあげると猫も喜びます。

しかし、高いところにキャットウォークを作れば猫が勝手に上がるわけではありません。残念ながら、せっかく設置しても興味を失ってしまうこともあります。

それは「行っても楽しくない」「安心できる場所がない」からです。設置した当初は好奇心やマーキングの為に行きますが、いずれ飽きて使わなくなったりします。

猫は回遊する動物です。設置計画として、後戻りするような行き止まりを作らないこと、特に多頭飼育の場合は複数の昇降場所が必要となります。

キャットウォークの途中に「窓から外が見える」「飼い主の様子が観察できる」「身を隠せるボックスを設置する」など“好奇心が満たされる” “安心できる・安全な場所がある”という仕掛けをつくることがポイントです。

変化に富んだキャットウォーク・キャットステップ例(清水さん提供写真)

窓の上には細いカーテンレール、部屋の上部にはエアコンがあるというお宅がほとんどだと思います。 猫はそのような場所も上ってしまい、滑って足を挟んでケガをしたり、フィルターで爪とぎをしたりということもあります。

カーテンレールの上に直に乗らないようにキャットウォークを設置し、エアコン上部は猫が入らないように対策を取りましょう。エアコンは、天井から5cmほど離して設置すれば機能として問題ありませんし、成猫も乗ることができません。


キャットタワー


キャットタワーを猫に使ってもらうために、設置場所を猫の気持ちになって考えてみましょう。

猫は、高くて安全な所から自分のテリトリーを見渡して安心したり、風にそよぐ木の葉や、動く物を眺めて好奇心を満たしたりします。なので、外が見える窓際や、飼い主を観察できる場所などがオススメです。

キャットタワーが大きくて邪魔だからと、見通しの悪い部屋の隅に置くと気に入ってもらえません。人間だって何もない部屋の隅っこなんて楽しくありませんよね。


人も快適に暮らすための猫仕様とは?

愛猫には安全に楽しく暮らしてほしいのはもちろんですが、そのために人が我慢してばかりでは本末転倒。人も快適に暮らすための工夫とは?


部屋を閉め切れる猫ドア


猫が自由に部屋を行き来でき、空調効率も考えると猫専用のドアを設置するといいでしょう。一時的に入ってほしくないときには、猫ドアを締め切ることもできます。

閉め切ることも可能な猫ドア例(清水さん提供写真)


収納棚やドアノブ・ハンドル


ドアや収納扉を開けてしまう器用な猫もいます。開けたら閉めてくれると問題は無いのですが(笑)。

猫に開けられないよう、レバーハンドルの向きを垂直に設置することは簡単にできますし、最初から丸形のドアノブやプッシュプルハンドルにしておくと、開けることができません。収納部屋の扉には、プッシュ式で簡単に鍵が掛けられるツマミなどを付けるといいですよ。


ペット防災/猫のために普段からできることとは?

自然災害が多発する昨今。愛猫のための防災対策として家でできることはなんでしょうか?


避難所へ行く備え


まずは人と同じく、薬や食料、トイレの猫砂など必要な物資を備蓄しておくこと。また、スムーズにキャリーバッグで避難できるように、日頃からキャリーバッグに慣らしておくことも大切です。

自治体によって避難所のペット受け入れ条件は異なるので、お住まいの自治体の対応を確認しておきましょう。


在宅避難のために


倒壊などの危険がなければ、猫がいつもの環境で暮らせる在宅避難という方法もあります。家の中に日頃から猫が隠れられる場所を作っておくと、いざという時にも安心です。


猫の生態・暮らしを知った家づくりを

猫のために「安心・快適な家づくり」の基本は、猫の暮らしぶりに寄り添って考えることです。理想の家づくりは「人」にとっても、「猫」にとっても同じということがよく分かりました。

そのためにも猫の生態だけでなく、愛猫の運動能力や好みもよく知って家づくりに活かしてあげたいですね。

清水満さんプロフィール

一級建築士/愛玩動物飼養管理士/株式会社ネコアイ代表取締役
「猫専門建築士」として、猫と幸せに暮らす住宅の設計を主な業務としているが、ねこ検定実行委員会主催「ねこ検定」のテキスト監修や猫用品の開発など、猫専門の総合コンサルタントとしても活動している。自身も愛猫3匹と暮らす。

他にも! ペットとの生活を始める前に読んでおきたい記事はこちら
>> 猫と人間が快適に過ごせる家づくり【無重力猫ミルコのお家】
>>「ペットと暮らす家」を作りたい! 参考になる記事まとめ!

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この記事を書いた人

烏田千洋

編集・ライター
家の建て替えか、リフォームか迷いつつ情報収集の日々。憧れは、トリプルガラスの樹脂窓と、全自動おそうじ機能付きの換気扇、朝日の入る日当たりのよいお家! 趣味、園芸。日本のいいね!が、見つかるメディア『japonism』編集長