新築住宅の省エネルギー基準適合が義務化に!内容をチェックしておこう

2023.01.03 椎名前太
省エネ住宅には「光熱費の削減」や「室温が安定して快適に過ごせる」「ヒートショックの予防になる」といったさまざまなメリットがあります。しかし、その普及はなかなか進んでいないようです。

そこで政府は、「新築住宅の省エネルギー基準への適合」を2025年度までに義務化することを決めました。

これによってこれから建てる家はどのように変わるのでしょうか。



省エネルギー基準への適合義務化の背景

まずは義務化の背景から説明しましょう。政府は2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み(温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)という目標を掲げています。

この目標の達成のためには、住宅を含む建築物の省エネ化が重要になります。なぜなら、建築物は全エネルギー消費量の約3割を占めるからです。

このような背景から政府は以下の内容を含む「エネルギー基本計画」を閣議決定しました(2021年10月22日)。

  • 2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB基準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す。
  • 建築物省エネ法を改正し、省エネルギー基準適合義務の対象外である住宅及び小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化する。

ここで注目したいのが3年後に迫っている省エネルギー基準(断熱等性能等級)適合の義務化です。


住宅の省エネルギー基準とは

省エネルギー基準とは、断熱化など建築物のエネルギー消費を削減する対策の程度を表示するものです。2022年3月31日までは4段階に分かれ、最高等級の等級4(平成28年基準)でも実質は平成11年基準と同等で、先進国の中では最低レベルでした。

しかもそのレベルでさえクリアする義務はなく、実際はエネルギーを大量に消費する住宅が供給され続けてきたのです。

しかし、上記のような省エネに関する目標が掲げられるようになり、住宅の省エネルギー基準もより高いレベルが求められるようになりました。

そこで2022年4月より「等級5」が、同10月より「等級6」「等級7」が新設されることになりました。


「等級5」


ZEH基準相当。「ZEH(ゼッチ)」とは、ゼロエネルギーハウスのことで、高い断熱性を確保しつつ、太陽光発電システムを設置することで光熱費の収支を実質ゼロ以下にする住宅です。

>>ZEH(ゼッチ)とは? 補助金いくら出る? いま注目の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を解説


「等級6」


「HEAT20」 G2相当。「HEAT20」とは「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のことです。この基準はUA値(外皮平均熱還流率※住宅の熱の逃げやすさ)という指標が用いられます。

これは建物の内部から、外壁、屋根、などの開口部を通過して外部へ逃げる熱量を表した値です。この値が小さいほど省エネルギー性能が高いことになります。

以下の図は「HEAT20」が作成したものです。「住宅シナリオ」を各地域区分の代表都市で実現するための外皮平均熱貫流率UA値が書かれています。省エネルギー基準におけるUA値は地域によって異なり(全8地域)、たとえば東京23区を含む6地域のG2のUA値は0.46となっています。

住宅水準 G1・G2・G3
参照: 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会

下図では、暖房期最低室温について表にされています。地域については上記のものを参照にして、お住まいの地域と照らし合わせてみてください。

NEB:室温とG1~G3
参照: 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会

「HEAT20」では、G2は1・2地域を除けば 、暖房期最低室温はおおむね13℃。G3はおおむね15℃以上を確保することとしており、これらは室内の温度むらを小さくし、住まい手の暮らしやすさの向上や温度ストレスを考え設定しています。


「等級7」


「HEAT20」 G3相当。G2を上回る省エネ性能になります。UA値は0.26です(6地域の場合)。2025年からは、すべての新築住宅に対して等級4(平成28年基準)以上が義務化されることになります。

>>最近よく聞く住宅の省エネ基準。「HEAT20」と「ZEH」の違いって?


住宅ローン金利などの優遇策


省エネ住宅は、住宅ローンを利用する際などにもメリットがあります。たとえば「フラット35」では、従来から断熱等級4以上などの要件を満たせば一定期間金利が0.25%優遇される「フラット35S」を利用することができました。

それが2022年10月からは要件が断熱性能5以上などに変更され、さらに金利が一定期間0.5%優遇される「フラット35S(ZEH)」も追加されます。

また、住宅ローン減税を利用する場合も省エネ住宅は優遇されます。住宅ローン減税とは、ローンを利用して住宅を取得する場合、毎年末の住宅ローン残高に応じて所得税を控除する制度です。

この制度を利用する際、省エネ性能が高い住宅ほど借入限度額も下図のように高く(控除額が多く)なります。

参照: 国土交通省 住宅ローン減税制度について

>>お金の専門家に聞く!注文住宅は建てた後のコスパも大事。エコハウスを選ぶメリットは?


建築費だけでなくトータルコストで考える

2025年度からは省エネルギー基準(等級4)が義務化されます。そして省エネ性能が上がれば上がるほど建築費も高くなります。だからといって「リーズナブルな等級4にしておく」という考えは得策ではないかもしれません。

省エネ性能が上がればそれだけ冷暖房費が削減できます。また、高性能な家ならばそれだけ高値で売却できる可能性も高まります。

これから家を建てるならば建築費だけでなく、このようなトータルコストも考慮して検討するのが正解ではないでしょうか。


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この記事を書いた人

椎名前太

住宅・不動産ライター
住宅・不動産ライター。建築家などの専門家とは違う徹底した消費者目線で法律・税制関係でも分かりやすく書くのが得意。不動産関連書籍の執筆・編集協力の実績は35冊以上。その他雑誌やWebでも執筆。宅地建物取引士。