熊本地震から分かる耐震住宅。耐震住宅において大切なこと。
熊本地震とは一体何だったの?
熊本で起きた一連の地震については、まだ記憶に新しいと思います。4月14日から約一週間にわたり、熊本県を中心に発生した一連の地震。
震度7が2回に、震度6強が2回に、震度6弱が3回。
実に、震度6以上の地震が7回も起きてしまったのです。
これほど繰り返し同じ地点で大きな地震が起きたのは、気象庁の観測史上でも初めてのことだそうです。
この短期間に繰り返された「想定外」の強い揺れは今、建物の耐震基準をも揺るがしています。
知っておきたい耐震基準の歴史、旧耐震と新耐震と新・新耐震
そもそも耐震基準においては、かつては「震度5強の地震で損傷しない」程度の基準に達していれば、良しとされて来た歴史があります。いわゆる、「旧耐震」と呼ばれる昔の基準です。
それが、1981年に建築基準法が改正されて以来、「震度6強から7の揺れに見舞われても倒壊や崩壊を防げるだけの強度」が求められてきました。
これが、いわゆる「新耐震」と言われるものです。
しかし、95年に起こった阪神淡路大震災で、新耐震の木造住宅でも被害が続出してしまいました。
そのため、2000年には、木造住宅について「柱と梁の接合金具」や、「壁の配置の仕様」をさらに明確に、厳格に変更されたのです。
こちらは、「新・新耐震」とも呼ばれています。
ところが今回、その「新・新耐震」の基準をクリアした木造住宅ですらも、激しく損傷、倒壊してしまい、更なる耐震基準の見直しが課題となっています。
新・新耐震」基準であっても、今回の熊本地震に対応できなかった
倒壊していた建物の多くは1981年以前に建てられた「旧耐震」とみられる古い住宅ですが、中には「新耐震」とみられる建物でも倒壊しているものがあったと言われます。さらに、「日本建築学会九州支部による益城町での調査」では、なんと、2000年以降に建てられたとみられる「新・新耐震」の木造住宅ですら、全壊している物件があったそうです。
これはつまり、最新の「新・新耐震」基準であっても、今回の熊本地震に対応できなかったケースがあるということになる訳です。
何故、最新の耐震基準にも関わらず倒壊したの?
では何故、最新の「新・新耐震基準」にも関わらず、建物は倒壊してしまったのでしょうか?理由は、建物が「繰り返し」「2回以上の」震度6強から7の揺れに見舞われることが「想定されていなかった」(国土交通省建築指導課)からです。
現在、熊本県益城町では、木造住宅の耐震診断と補強に詳しい研究者達が、調査を進めている段階です。
熊本地震被災者が語る「住宅のススメ」とは?
実際に熊本地震の被災者であるライターの目黒こあさんに、被災者目線での住宅について聞いてみました。
とりあえず木造はやばい。
一軒家でも、アパートでも。家の中いたら死ぬって直感的にわかるほど揺れる。涙
あと、ガラスもがんがん割れるけん、
それでケガせんように対策できるかは大きい。
家は木造で築30年経ってるから、居られんかったよ。
木造建築用の有効な耐震構造も開発されており、適切な設計をすれば、阪神淡路大震災と同程度の地震にも十分耐える言われていますが、今回の熊本地震は一味違います。
というのも、2016年4月14日日夜の熊本地震の本震の揺れは、震度7を観測した熊本県益城(ましき)町で最大加速度1580ガル、最大速度92カインを記録し、加速度は1995年の阪神大震災の891ガルを大きく上回ったことが防災科学技術研究所の地震波の解析で分かっています。実際に被災して、直感的に木造は危ないと、多くの住宅を見て感じたようです。
隣のセキスイハイムの築8年くらいは余裕で中で暮らせてたけど、壁にひびは入ってた。
どこも瓦が飛びまくって、全滅。すぐ雨ふるけん、急いでブルーシートで応急処置。
屋根は、瓦じゃなくて、飛ばない平たい安い素材があるけんそれがいいっていってた。
瓦が飛ぶことによるリスクが分かります。ガルバリウム鋼板屋根など、新素材についての知識を深める必要がありますね。
中心部(市電が走っとる大江)に、熊本一高層階のマンションがあるんだけど、そこは耐震うたってたのに、まじ危険だったらしい。
木造以外で耐震できる、なるべく新しい平屋がベストかな。
被災者の目黒さんの出した耐震住宅の結論は、「木造以外で耐震できる、なるべく新しい平屋」。これはあくまでも、個人の意見ですが、大事なことは、私たちが住んでいる土地の特徴、住宅に関する知識、将来のリスクを日ごろから学ぶ続けるということです。
そして、耐震は、家のリスク管理の一つですが、あくまで「地震に耐える」戦略の一つに過ぎないということです。家のリスク管理の耐震のさらにリスクを管理するぐらいの視点で、住宅を捉えていくことが大事だということが、目黒さんからのインタビューから分かりました。
被災地の現在の状況について
現地では今、土ぶき瓦の古い住宅はいくつか並んで倒壊し、道を塞いでいるようです。これらは、旧耐震基準の住宅です。さらに、アパートの周りの地面には、大きな亀裂が南北方向に走っています。
気象庁は、今回の地震を活断層が南北方向に引っ張られて動いた「横ずれ断層型の地震」と説明しています。どうやら、活断層のずれと同じ向きに、亀裂が出来るようです。
これから、耐震は注文住宅において、一般の方の注目の的になります。その分、売る側も耐震について様々なプロモーションを行います。
正しいリテラシーで耐震を判断できるように、日ごろから、少しずつ住宅に関する知識を身につけていくようにしてみて下さい。