家の新築時がチャンス!プロに聞く「薪ストーブの始め方」

2022.01.31 烏田千洋
薪ストーブのゆらめく炎を眺めながら、ぬくぬくのお部屋でくつろぐひととき。薪ストーブのある暮らしに憧れるけれど、お家に薪ストーブを導入するのは大変そう。

そもそも、別荘地でもない住宅街で、煙を出す薪ストーブのある暮らしなんて可能なのでしょうか?


今回は、一般の戸建て住宅に薪ストーブを導入するための疑問について、プロに突撃インタビュー。薪ストーブの選び方から導入費用、導入後のメンテナンスのことまで教えていただきました。

教えてくださったのは、薪ストーブの安全な普及のための活動を行う一般社団法人日本暖炉ストーブ協会のおふたり。薪ストーブ導入で、最も重要なこととは?

<お話を伺った方>
一般社団法人 日本暖炉ストーブ協会
副理事長 岩﨑 秀明 氏/理事 伊藤 淳 氏


そもそも、薪ストーブとは?

薪ストーブとは、薪を燃料として燃やして暖をとったり、料理を行うための器具。大まかに言うと、鋼板や鋳物などを材質としたストーブ本体と、煙を屋外に排出する煙突からなります。

「ストーブ」と聞くと、日本では「暖房器具」をイメージしがちですが、本場ヨーロッパでは「調理器具」のこと。薪ストーブ=WOOD STOVEは、料理ができることが基本なのだそう。

もちろん暖房効果も抜群。薪ストーブ特有の輻射熱と遠赤外線効果で、身体は芯からぽかぽかに。さらに、空間だけでなく部屋のや壁、天井にも蓄熱され、換気をしても暖かさが残るという優れものです。


[質問1]どんな薪ストーブを選べばいいの?

――薪ストーブと言っても、さまざまな種類がありますね。導入を検討するにあたっては、何をどう選べばいいのか迷います。選び方を教えてください。

使い方を想像して、イメージを膨らませよう!


岩﨑さん(以下、敬称略):
さまざまなメーカーから、さまざまな機種が販売されていますが、薪ストーブの機能は基本的には「火を燃やす」というたったひとつ。薪を燃やして暖かくなりますから、暖房は当たり前。プラスして、何をしたいかということを考えていただくとよいと思います。

料理をしたい。料理でも、煮物、焼くもの、いろいろあります。機種によって、得意分野があります。

炎を楽しみたい。薪ストーブは一台一台、炎が違います。それが楽しい。

伊藤さん(以下、敬称略):
リビングでくつろいで、炎を見たいという方には、それができるタイプをオススメします。料理でも、煮込みだけでいいのか、中でピザを焼きたいのか、ダッチオーブンを使いたいのかによって、オススメする機種が違ってきます。

岩﨑:
ぜひ想像力を働かせて、使い方を広げてみてください。


[質問2]導入費用は、どのくらい?

――薪ストーブの導入には、どのくらい費用がかかりますか?

最低予算は100万円~


岩﨑:
薪ストーブの設置には、煙突が必要です。その煙突を安全に設置するためには、専門業者が工事をします。薪ストーブ本体、煙突、取付工事で、一般的には最低100万円程度かかります。本体の機種や、煙突の高さ、地域の状況によっても金額は変わってきますので、あくまで参考です。

伊藤:
施工の際は、30~40万円の本体と煙突と施工費で、「最低100万円は見てください」とお話をします。

煙突は建物に設置するので、家の中の設置場所に応じて、煙突プランが決まってきます。設置費用は、まさにケースバイケース。また、本体価格も20~110万円程度と幅があります。

さらに、薪ストーブを設置する露台を装飾的にしたいとか、壁との間の遮熱壁を何の材質で作るかなどでも金額は大きく異なります。



[質問3]薪ストーブの導入計画の進め方は?

――いざ、薪ストーブを導入したいと思っても、どうすればいいか分かりません。計画の方法を教えてください。

計画・施工は、信頼できるプロに依頼を!


岩﨑:
薪ストーブは、火を燃やします。正しく設置されていなかったり、誤った使い方をしてしまうと、最悪の場合、火災が発生する危険性をはらんでいます。

そのため、正しい知識を持った専門業者による設置計画と施工が絶対条件です。

ただし、家の中のここに置きたいけど、煙突の設置がうまくできないので、導入することができないという残念なケースもあり得ます。排気のためには煙突はなるべくまっすぐな方がいいのですが、煙突がやたらに曲がらなくてはならないというような現場の状況では、つけられない場合もあるのです。

そのため、家を建てるときに、あわせて薪ストーブの導入もプランするというのが確実な方法ではあります。

土地探しのときから、計画は始まっている!


伊藤:
家を建てる土地探しの段階から、相談に来られる方が結構いらっしゃいます。薪ストーブに向き不向きの場所を聞いていかれます。風向きや、周辺環境などの立地条件をちゃんと考えていただいたほうが、後々気兼ねなく使っていただけますので、土地購入の際から配慮するのはオススメです。

そして、その一年後くらいに戻って来られて、「土地が決まって、いま家のプランをしているので設置場所についてアドバイスを」と。具体的な薪ストーブ設置に関する相談に来られるという方も、意外と多いです。

家のプランのタイミングでは、どんな使い方をしたいのか、暖めたい面積はどれくらいかなどをお聞きして、設置場所のアドバイスをさせていただきます。たとえば、料理をしないのであればリビングでいいが、料理したいならリビングとダイニングの中間がオススメといったかたちです。


[質問4]住宅密集地でも導入できる?

――薪を燃やすわけですから、煙の臭いはどうしても発生しますよね。住宅密集地でも、薪ストーブは導入可能でしょうか?

残念ながら、難しい場合はアリ


岩﨑:
充分に乾燥した薪を、正しく燃やせば煙や臭いは抑えることは可能ですが、ゼロにはなりません。

周辺の住宅が24時間換気で給気口があれば、煙はその給気口に吸い寄せられていきます。煙突の排気口が隣家の給気口のそばにある、そのような立地条件では、どんなにマナーよく炊いていたとしても、煙の臭いでクレームになってしまうということはあり得ます。

導入の検討段階で、私たち薪ストーブを販売する側が近隣状況を確認する必要があると考えています。周辺環境から、販売をお断りすることもあります。

伊藤:
年間に何件かは、お断りせざるを得ないケースはあります。

たとえば、冬の風向きが、ほぼ北西風の地域の場合。北西風ということは風下にあたる南東側に煙がいくので、南東側に高い建物がある場合などは排気の関係上、お断りせざるを得ません。

薪ストーブは、設置して終わりではありません。メンテナンスをし続ける、その後のお付き合いの方が長いですから。


[質問5]高気密住宅での導入の注意点は?

――最近の住宅は高気密になっています。新築の場合、24時間換気も義務付けられています。そうした高気密、自動給排気の家に、薪ストーブを導入する際の注意点はありますか?

給気に気を付けよう


岩﨑:
高気密の建物で、薪ストーブを燃焼しながら換気扇を回すと火が消えてしまうことがあります。これは家の中の気圧が外よりも高い状態、いわゆる「負圧」になってしまっているから。負圧の状態になると、煙が家の中に逆流してくる原因にもなります。

伊藤:
そのため、設計の段階でキッチンのレンジフード(換気扇)は、同時給排気型、もしくは連動式給気シャッター付きを選んでくださいとお願しています。もしくは、換気扇を回すときは、を少し開けて外気を取り入れるといったアナログな対応もできますというお話もします。



[質問6]煙突掃除などメンテナンスの注意点は?

――煙突掃除などのメンテナンスの頻度や方法を教えてください。煙突掃除には、足場を組む必要があるのでしょうか?

プロにお願いするのが理想!


岩﨑:
きちんとした業者であれば、薪ストーブを設置する際に、煙突掃除のことまで計画して設置します。煙突掃除の度に足場を組むようでは、後々ものすごいお金がかかってくることになってしまいます。

伊藤:
メンテナンスの頻度は、使用頻度にもよりますが、最低でも年に一回は煙突掃除と本体の点検・清掃をしてくださいとお願いしています。

これをプロがやるのかオーナーがやるかは、基本的にはオーナーの選択ですが、掃除中の落下やメンテナンス不良による健康被害などの可能性はあるので、セルフメンテナンスは必ずしもオススメしていません。


[質問7]正しい薪の燃やし方とは?

――正しく薪を燃やせば煙を抑えられるとのことですが、正しい薪の燃やし方とは?

薪の乾燥がポイント


岩﨑:
とにかくまずは、薪の乾燥です。きちんと乾燥した薪を炊くことが一番です。割ったばかりの薪には水分が50%以上含まれていますが、燃料としての薪は、20%以下の水分量であることが適当です。

また、薪以外のごみは絶対に燃やさないでください。異臭や煙、本体の故障の原因になります。

伊藤:
薪の水分量は、含水率計で測ることができます。

含水率計は、薪の外側だけ指して測ってもダメ。薪を割って中心部の含水率を測ってみてください。たとえば、外側が含水率12%程度だったとしても、真ん中は20%以上ということはよくあることです。

乾燥した薪でも、雨に濡れれば一時的に含水率は上がります。雨や雪が降るときには、事前に家の中に多めにいれておくのがオススメです。



[質問8]薪ストーブ・オーナーとしての心得

――最後に、未来の薪ストーブ・オーナーとしての心得を教えてください。

業者選びが最も重要!


伊藤:
住宅密集地で煙が気になるなら、煙が少ない高性能なストーブを導入するという手もありますが、それよりも重要なのは、ちゃんと乾燥した薪を使って、ちゃんと温度管理をして正しく使うということ。その知識を持たれることが、一番大事です。

岩﨑:
正しい知識を持たせるために、我々の協会では、認定技術者という試験を設けています。認定技術者が在籍している業者でお買い求めいただければ、正しい知識、正しい燃やし方を知ることができます。知らないで燃やしていて、ルール違反になっている場合もありますから注意が必要です。

総合的に言うと、薪ストーブ導入にあたっては、業者選びが最も重要ということですね。

安全で、楽しい薪ストーブライフのためには、信頼できる専門業者を選ぶこと。安心の業者を紹介できるのが、我々の協会です。ホームページで協会員を紹介していますので、ぜひのぞいてみてください。


[一問一答]薪の手配から、環境のことまで!

ここからは一問一答。Q&A形式で、具体的な薪ストーブの使い方、暮らしのノウハウをお届けします。

Q: 薪ストーブは、すぐ暖まる?


A: 電気ストーブのようにスイッチオンというわけにはいかないが、比較的に暖まりやすい機種というものはある。また薪ストーブは、一度つければずっと暖かい。本場の北欧などでは、冬の入り口に一度つけたら春までずっと消さない使い方もある。

Q: 消火方法は?


A: 自然に燃え尽きるのを待つ。水をかけるなどの余計なことは絶対にしない。ストーブの破損の原因になるし、最悪の場合、水蒸気爆発の危険も。

Q: 燃焼中に目を離しても大丈夫?


A: ストーブの中であれば燃焼中に外出しても問題ない。ただし、周りに洗濯物を干したり、余計なものを置かないこと。ストーブから引火して火災の原因になる。洗濯物を干すなら、万が一倒れたり落ちたりしてもストーブにかからない位置に干す。

Q: 薪の手配はどうする? 費用は?


A: 薪ストーブユーザーの7割は専門店から購入、3割は自分で作っている。薪の購入の参考費用は、1カ月分相当で3万円程度(2束/日)。

Q: 薪を自作する場合は、どのように入手しているの?


A: 専門店からの原木情報が入ったり、国や自治体による河川敷の樹の頒布会などの機会がある。“薪目線”で情報が入ってくるようになり、公園や河川敷などの伐採木の山が宝の山に見えるようになる。薪作りは、楽しんでやられる方が多い。

Q: 灰の処分方法は?


A: 自治体によっては、灰の回収の方法が決まっているところがある。また、処分ではなく利活用の道も多い。畑や家庭菜園をやっている方にあげると喜ばれる。灰はアルカリ性なので、酸性の土を中和してくれる。灰をあげて、野菜をもらうという交流をされている方も。その他、草木染や陶芸、あく抜きなどでも活用されている。

Q: 夏場、使用しない季節はどうする?


A: 夏場に炊くと、湿気とりや虫よけに効果がある。炊かない場合は、インテリアとして楽しむ。

Q: 薪ストーブは、地球環境保全に貢献できる?


A: 薪つまり樹を使うことが、森林の再生を促し育てることにつながる。森林が健やかになることは、害獣被害や自然災害の軽減にも貢献できる。一番いいことは、薪ストーブを通して山に目を向けてくれること。意識が変われば、ゴミを減らそうといった行動にもつながると期待している。


今回、薪ストーブの専門家にお話を伺い、薪ストーブのある楽しい暮らしのためには、憧れだけでなく安全への意識と正しい知識が大切だということがよく分かりました。

導入を検討される際は、正しい知識と技術をもった専門家に早め早めの相談が大切! 日本暖炉ストーブ協会のホームページでは、最寄りの協会認定ショップを検索することができますので、ぜひ参考にしてみてください。

一般社団法人 日本暖炉ストーブ協会(JFSA)とは?
高い技術水準と品質並びに安全性を兼ね備えた暖炉・薪ストーブの普及を目的に、1992年より活動開始。2010年4月より一般社団法人。2013年からJFSA認定技術者資格試験を実施し、販売及び施工に関する基本的知識を身につけた人材育成を行っている。
https://www.jfsa.gr.jp/

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https://www.aidagroup.co.jp/company/info/privacy.html

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この記事を書いた人

烏田千洋

編集・ライター
家の建て替えか、リフォームか迷いつつ情報収集の日々。憧れは、トリプルガラスの樹脂窓と、全自動おそうじ機能付きの換気扇、朝日の入る日当たりのよいお家! 趣味、園芸。日本のいいね!が、見つかるメディア『japonism』編集長